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若き鷲の頭***3
作戦を立てる時にのみ使われる卓上では蝋燭が頼りなげに揺れている。マライカの傷の手当てを終えたファリスは応接間に戻るとグラスいっぱいに注いだワインをひと息に飲み干した。続いてやって来たのは、ファリスと同等か少し高めの背をしたムジーブだ。
「2階から落ちたらしいじゃないか。彼、様子はどうだい?」
短髪の彼はファリスよりも褐色がかった肌と切れ長の目、肉厚な鷲鼻と唇が印象的で、筋肉質な肉体をもつ。彼の片腕だ。
ムジーブは剣の腕もさながら頭も切れる。頼れる人間ではあるものの、たまに口うるさいのがキズだ。そして、そのたまには、紛れもなく今だった。
「別に人質の様子などどうだっていいだろう」
返事が矛盾だらけだが、果たして本人は理解しているのだろうか。ムジーブは言いたい言葉を引っ込めると、片方の眉を上げるに留めた。
「ファリス・フラウ。王宮の兵士さえも手を焼くハイサムの頭ともあろう者が少々甘すぎやしないか? 彼は人質だろう? 他の奴ら同様なぜ足枷を嵌めておかなかった? 逃亡することくらい判りきっていたことだろう?」
――そんなことは判っている。
今度はファリスが口を閉じる番だった。
そもそもファリスがマライカに枷を嵌めなかったのは、彼自ら望んだ結婚だったのかを知りたかったからだ。
彼のことなら捕らえる前に調べ上げている。
名前はマライカ・オブレウス。年は17。彼はベータを両親に持ち、父親は真面目一徹の性格で、王宮で働く商人。妻は心優しく、愛情に溢れた人柄だ。
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