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王宮の兵***4
自分と出会ってしまったが為に、ファリスは一生マライカが死ぬまで面倒を見続けなければならないのだ。
彼には幸せになってほしかった。
自分の犠牲なんてもうたくさんだ。
だからマライカは一人で子供を産み、育てる決意をした。
すべては、ファリスに幸福な人生を送ってもらう為に――……。
オメガと一緒になっても幸福になんてなれない。
こんな臆病で子を宿すしか能のない人間なんて彼の足手纏いになるだけなのだ。
――ああ、どうしよう。よりによって本人に知られてしまったなんて……。
ファリスはすでに大切な妹を亡くしている。それだけでも辛い筈だ。それ以上の不幸を背負ってほしくはない。
彼に相応しいのは神々しい世界。華々しい貴族のような生活だ。
マライカは引き千切れんばかりに首を振り続ける。
「貴方様には助けていただき、本当に感謝しております。恩をお返ししたくて言ったこと。身籠もっているなんてとんでもない。あれは偽りでございます」
「いいえ、この子は貴方様の子供を身籠もっています」
声は思いもしない方からした。ファリスと一緒になることをあんなに反対していた父親セオムが横やりを入れたのだ。これにはマライカは焦るばかりだ。
「父さん!」
マライカが父親にそれ以上余計なことを口にしないよう声を上げても、セオムは続けた。
「ファリス様、どうかマライカを嫁にもらってください。この子は身を挺して貴方に尽くすことでしょう」
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