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仕組まれた出会いと策略。***12

 ヴァイダの唇がマライカのすぐ目の前に迫っている。 「流石はあの男が抱いただけのことはあるな。すげぇ興奮する……」  アルコールの臭いを含んだねっとりとした息が頬を掠める。  しかしマライカはどんなに理不尽に責め立てられ、この身をぼろぼろにされたとしても、これ以上屈する気はなかった。マライカは目尻を上げて睨み、目の前にある男の顔に唾を吐いた。 「この薄汚れたオメガ風情が!」  プライドを傷つけられたヴァイダは怒りを露わにすると、マライカの脇腹をこれでもかというくらい強く蹴り上げた。マライカは蹲り、咳き込む。  マライカが苦しげに悶える姿を見た彼はドアを閉じ、逃げられないよう外側から鍵をかけた。  地面から伝わる靴音は次第に小さくなって消えていく……。  ひとりきりになったと知ったとたん、目に涙が込み上げてきた。  マライカは身体を丸め込み、すべての厄から身を守れるように願いながら両腕で自身を抱きしめた。 「……っひ」  引き結んだ唇から嗚咽が漏れる。  これからのことや両親のことを考えると胸が押し潰されそうだ。  何より、ファリスの身に危険が及んでいることもまた、マライカにとって気がかりだった。  この世でたった一人、マライカにとって唯一愛した男性。  目を閉じれば彼の姿が焼きついて離れない。  ターヘルの言うとおりだった。  ファリスの妹はダールの手によって命を奪われ、この世を去ったのだ。 「ファリス」  可哀相なファリス。彼は最愛の妹を助けられなかった自身を責め、ダールに恨みを抱えて生きている。

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