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仕組まれた出会いと策略。***11

 ヴァイダはよほどファリスが気に入らないらしい。不服そうに鼻を鳴らすと、さらに続けた。 「ところが、よ。おれたち下っ端の報酬はほんのひと握り。こっちは命の危険を侵してまで働いてるっていうのによ、これじゃぁ、割に合わねぇっての。そんである日、酒場で飲みながら愚痴ってたら、かの有名な大富豪のダール様が声を掛けてきたんだ。裏切るだけでたっぷり金を与えてくれるときたもんだ。今じゃ酒も女も全部手に入る。しかもハイサムの頭にも一泡吹かせられるし、たまんねぇぜ」  骨張った男の手がマライカの背中をひとなぞりすると、顎を固定して上を向かせた。マライカが訊ねてもいないことを自ら話し、優越感に浸っている。武勇伝のように話す彼の口からは、むせ返るようなアルコールの匂いがする。  この男の存在も、アルコールの匂いも。胸焼けしそうになるくらい気持ち悪い。顔を逸らしたいのに固定されていて、しかもダールからの執拗な責めに抗う力は殆ど残ってはいなかった。  話したいことを話しきったからだろうか。ヴァイダは静かになると、代わりに口からしゃっくりを上げた。上がった目尻が少しずつ下がっていく。  マライカは、ヴァイダの自分を見る目が少しずつ変化しているのに気がついた。 「どれ、それまでこのおれが慰めてやろう。なぁに、お互い愉しい時間を過ごしてりゃ、あっという間だぜ……なぁ?」  片方の手がマライカの服をくぐり抜けると一方の胸の飾りに触れた。

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