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拘束・絶望と死の狭間で。***1

 ⅩⅤ  突き刺すような白光が目に入ってくる。照明の眩しさによってマライカの意識は覚醒した。  どうやら自分は気を失っていたらしい。  気がつけば四方すべてが黒色に染まっているだだっ広い無機質な空間で、マライカは逃げられないよう四肢に鎖を取り付けられた状態で膝立ちになっていた。  上下の衣服はかろうじて身につけているものの、鞭で打たれたところは皮膚が裂け出血しているし、何度も蹴られた腹部や踏みつけられた手の甲には内出血が起きたのだろう青痣がくっきり浮き出ていた。  重い頭を起こしてみる。  右側前方の一角には鉄格子が嵌められていて、そこからは獣の低い呻り声が聞こえてくる。  おそらくはダールが飼っている人食い狼によるものだろう。恐怖はあるものの、しかしマライカにはもう抗う力も何も残されてはいなかった。  それというのも、四肢を繋ぐ楔もそうだが、薬によるヒートの抑制効果も切れはじめてきているからだ。ヒート状態により、体温が徐々に上がってきているのが判る。薬の効果は時期に消え失せ、自我が利かなくなるだろう。その証拠に、命の危険に迫られている今の状況であっても思考が上手く働かない。  真っ白になる頭の中で、懐かしい声が聞こえた気がした。 「マライカ!」 「誰か! 誰か助けて!! マライカ!!」  それはとても懐かしい声だった。  彼らとはたった2ヶ月くらいしか離れていなかったのに、一緒に暮らしていたのがもう何年も昔のように思える。

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