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第26話

 3ー6 泣くな  グレイシアは、浅い湯船に俺を膝まづかせると、俺の尻のあわいに手を沿わせてきた。  「あっ!」  俺が体を強張らせているのを見て、グレイシアは、俺の背中へ口づけて囁いた。  「まだ、ここ、も、汚され、て、ない、か」  グレイシアは、俺のそこへと指先をつぷっと差し込んできた。  「あぁっ!」  「固い、な。まだ、青、い、果実の、よう、だ」  グレイシアは、そっと俺の後孔から指を抜くと俺に囁いた。  「お前、に、頼みた、い、こと、が、ある」  俺は、ぐったりと湯船の縁にもたれ掛かってグレイシアを見上げた。  グレイシアは、俺に大きな柔らかい布をかけて包み込みながらそっと小声で言った。  「俺に、は、弟、がいる、ん、だが」  「んっ・・」  グレイシアは、俺の体を抱き上げると湯船から出して全身を拭っていった。  「たぶ、ん、お前、も、知って、いる、はず、だ」  俺の脳裏にふと、クーランドのことが過っていた。  「もしかして、クーランド?」  「そう、だ」  グレイシアは、頷くと俺に告げた。  「頼、む。弟、を、お前の、従僕、にして、く、れ」  「なんで?」  俺が問うと、グレイシアは、ふん、と鼻を鳴らした。  「弟、は、何も、能、がない。きっと、酷、い、買い手、しか、つかん。それ、なら、お前、の、従僕に、なった方が絶対、に、まし、だ」  「そうとも限らないだろうが」  俺は、低い声で呟いた。  「これから、地獄が待っているのかも」  「いや、そ、んな、こと、に、は、ならん」  グレイシアがにっと笑った。  「な、ぜ、なら、お前、には、女神の、加護、が、ある」  いや。  俺は、呻いた。  その女神に売り飛ばされたんですけど?  「断ったらどうする?」  俺が尋ねると、グレイシアは、答えた。  「も、し、断れ、ば、お前が、身ごもって、いる、こと、を、ばらす。そう、なれ、ば、お前、も、お前、の子、も、もっと、酷い、目に、あうこと、に、なる」  マジですか?  俺は、グレイシアの真剣な眼差しに仕方なく頷いた。  すると、グレイシアは、俺に微笑んだ。  優しい微笑みだった。  きっと、この人は、弟思いの優しい兄なのだろう。  俺は、少しだけ異世界に残してきた妹のことを思い出して涙ぐんだ。  ここに来たのがあいつでなくってよかった。  「泣く、な」  グレイシアは、そっと俺の涙を拭うと優しく囁いた。  「泣く、のは、もっと、あと、に、しろ」

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