28 / 167

第28話

 3ー8 魔王の花嫁ですか?  わゎっ!  俺は、慌ててペンダントトップを隠した。  バカか!  こんなとこでバレたらどうするんだよ!  アザゼルさんは、俺の方をじっと凝視していたが、すぐにまた口許を歪めた。  「君は、面白いな」  はい?  なんのことやら、理解できずに俺は、ぽかんとしていた。  俺を表する言葉には、いろいろあったが、大抵は、真面目とか、小物とか、そんな言葉であって、面白いなんて言われるのは初めてだった。  俺は、アザゼルさんと目があって見つめあった。  なんだか、ぽうっと胸にあったかい光が点ったような気がして頬が熱くなってきた。  アザゼルさんは、低い響いてくる声で囁いた。  「女神の加護を持っている奴隷なんてそうそういない。君は、何者なんだ?」  女神の加護?  俺は、苦笑を浮かべていた。  まったく、役にたたないけどな!  アザゼルさんがそっと俺の頬に触れてきた。大きな掌だった。  俺は、びくん、と体を跳ねさせた。  最初、アザゼルさんは、おどおどと触れていたが、だんだんと俺の首もとへと手を伸ばしてきた。  「美しい」  「んぅっ・・」  思わず漏れた声に、俺は、驚いて目を見開いた。  アザゼルさんの愛撫はしばらく続き、俺は、息を喘がせた。  「君の名は?ずいぶんと幼く見えるが幾つなんだ?」  「セツ。中田、セツ。年は、20才」  「20才?」  アザゼルさんが驚きを隠さずに呟く。  「20才?マジか。どう見ても15、6才の子供だとしか見えんな」  俺がじとっと見つめるとアザゼルさんが口ごもった。  「いや、すまない。失礼なことを」  「いや、別にいいですよ」  俺は、少しだけむっとしていた。  「よく言われるんで」  「そうか」  アザゼルさんがゆっくりと顔を近付けてきた。  「ぅんっ」  避ける間もなく俺の唇は、奪われた。  アザゼルさんは、俺の唇を軽く噛むと舌でぺろっと舐めた。  くすぐったい。  俺は、体をもぞもぞと動かした。  なんか。  変。  アザゼルさんは、俺の唇にそっと口付けるとそのまま体を離した。  そして、頬にそっと口付けると囁いた。  「よろしく頼む、セツ君」  「ふぁっ」  俺は、手で軽く喉元を撫でられて体を強張らせた。  「君のような花嫁を迎えられて私たちは、幸せだよ」  アザゼルさんがもう一度、口付ける。  「私たちの子供をはやく産んでくれよ、セツ君」

ともだちにシェアしよう!