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第32話

 4ー4 影  いやいや、しっかりしろ、俺!  俺は、両手で頬をぴしゃんと叩いた。  ここが正念場だ!  なんとか、うまく交渉して自由を勝ち取りたい!  ワチさんは、俺を下の階へと案内した。  「下は、魔王連合ギルドの窓口になっているんです」  ワチさんは、俺のことを振り替えって微笑んだ。  「でも、昼間は、ほとんどお客様は見えられません。魔王様方は、みなそれぞれの領地での任務がおありになるので」  俺は、ほっと胸を撫で下ろした。  そうか。  魔王様方はここにはいないのか、  大きなどこぞの歌劇団みたいな階段を下りていくとワチさんの言う通り人影も見当たらず静まり返っていた。  ワチさんは、1階の奥にある美しい彫刻の施された重厚な黒い扉の前へと俺を案内した。  「これは、真実の扉、と呼ばれています」  ワチさんは、俺に小声で話した。  「この扉からさきは、魔界です。セツ様、お気をつけられて」  マジですか?  俺は、今すぐ逃げ出したくなったのを堪えていた。  うん。  逃げるわけにはいかない。  ワチさんは、扉を3回ノックした。  「セツ様をお連れしました」  「入りなさい」  中から嗄れた声が聞こえた。  ワチさんは、俺に向かって頷くと扉を開いた。  うん。  中を覗いて俺は、ほっとしていた。  部屋の中は、普通の書斎、というか執務室だった。  部屋の四方を本が並んだ棚に囲まれていて、その中央に実務重視の大きなデスクがあってそこにアザゼルさんが座って何かの書類に目を通していた。  アザゼルさんは黒縁のメガネをかけていて、ほんとに仕事のできる男っていう感じだった。  「この子が、セツ君か?」  部屋の奥の方から嗄れた声が聞こえてきて俺は、そちらに目をやった。  隅の壁際に置かれた椅子に腰かけた黒い影が俺を見つめているのがわかった。  それは、霧のようなものが集まった影のように俺には思われた。  「こちらへ」  その声の主は、俺を呼んだ。  俺は、近寄りたくはなかったが体が俺の意思を無視して勝手にその影の方へと近付いていった。  空を漂うように伸びてきた影が俺に触れた。  「んぅっ!」  影の触れたところが熱くって。  俺は、なんだかぞくぞく体が震えるのをとめられなかった。  影は、俺の体を包み込むと、俺を舐めるようにそっと辿っていった。  「あっ!」  俺は、体を強張らせた。  何かが。  入ってくる。  「やっ・・!」  「ほう、本当に魔王となる子を身ごもっているようだな。だが、これは、魔術の類いが関わっているね。それに」  「あぁっ!」  俺は、入ってくる何かを拒もうと身を捩った。  声の主は、低い笑い声をたてた。  「フローディア、の匂いがする」  「やっ!やめっ!」  俺は、潤んだ目でアザゼルさんの方を見た。    

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