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第40話
5ー4 不幸じゃなくってよかった。
俺は、3人を見下ろしてため息をついた。
まさか、そんな前から俺、狙われてたのか?
俺は、ちょんちょんと肩をつつかれて振り返った。
クーランドが目を煌めかせている。
俺は、もう一度深いため息をついた。
「こいつらは、俺の幼馴染みで同中で同じ高校に行って、同じ大学に通って、一緒にヘビメタバンドをやっていた仲間たちだ」
銀髪の美形が、田中君。
バンドのリーダーでドラム担当。
「本名は、ダイナス・ダルダロスだ」
次の青い髪の猫耳が、中島君。
バンドではベース担当。
「俺は、クライアム・レイノルズ。セツの彼氏に1番近い男だ」
何が?
俺は、中島のおつむをはたいた。
「なにが、彼氏に近いだ!嘘つくな!」
「きゅぅん・・」
ちょっと落ち込んでる姿がかわいい?
俺は、最後の1人に向き合った。
緑の虎男。こいつは、天野君。
バンドのボーカルで、奇跡のデスボイスと呼ばれた男だった。
「本名は、ロスアンジール・プライムローズだ」
ああ。
俺は、目を閉じた。
相変わらずいい声してるなぁ。
俺たちのバンド『ブルーブラッド』は、インディーズではけっこう人気のあるバンドだった。
あともう少しでプロデビューというところで、こいつらがいきなりバンドを抜けるとか言い出したんだ。
「そのときの俺の落胆がわかるか?」
俺は、3人を見回した。
「田中君は、アメリカのお祖母ちゃんが病気でお祖母ちゃんのとこに留学するんだっけ?」
俺は、にっこりと笑った。
「それに、中島君は、お父さんが病気でイギリスの実家にかえるんだったっけ?」
俺は、ちらっと虎男を見つめた。
「お前に至っては、不治の病で遠くの病院に入院して面会謝絶だったっけな?天野君?」
「その・・」
虎男がうつ向いてぼそぼそと呟いた。
「こいつらがまさか、同時にバンドを抜けるとは思わなくって」
「俺がいってるのはそんなことじゃないんだよ」
俺は、そっと3人の首もとに手を回して抱き締めた。
「よかった。病気の人たちは、いないんだな」
「「「セツ!」」」
ほんとに、よかった。
俺は、そっと涙を拭った。
こいつらがみんな不幸じゃなくってよかった。
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