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第42話
5ー6 戦闘奴隷を買おう。
ふとグレイシアのことを見た俺は、グレイシアの手首に包帯が巻かれていることに気づいた。
この前、クーランドと魔王連合ギルドに来た時にはなかったのに?
俺は、そっとグレイシアに話しかけた。
「どうしたんだ?その怪我は」
「なんでも、ない」
グレイシアは、ぷいっとそっぽを向いた。
俺は、魔王連合ギルドから出る前にクーランドと話したことを思い出していた。
「本当は、ドワーフなんてあまり売り物にはならないらしいんだ。グレイシアは、俺よりも10才も年上だし。5年前に俺と同い年で王都に売られていったけど、いまだに買い手がつかなくて。あの変態奴隷商にひどい目にあわされてるんだ」
クーランドは、目に涙を溜めて訴えた。
「俺なんか買わずに、本当は、グレイシアを買ってやってほしかったんだ。でも、グレイシアがどうしてもあんたのところに行けって言うからきたけど・・・」
俺は、グレイシアの側へと歩み寄るとそっと包帯の上に手を置いた。
「ヒール」
ぽうっと光が灯りグレイシアの方へと流れ込んでいくのがわかった。
だが、グレイシアが突然、俺の手を振り払った。
「こん、な、力、俺に、は、使うな!もったい、ない」
俺は、グレイシアの頬に朱がさしているのに気がついて、ぎゅっと拳を握りしめた。
こいつは、こんなにも誇り高いのにこんなとこで奴隷商人たちの玩具にされているんだ。
「もったいなくなんて、ない」
俺は、かまわずグレイシアの手を掴んで傷を治した。
「んっ!」
グレイシアが体を固くした。
俺は、そっとグレイシアの手首の包帯を外した。
うん。
傷は、すっかりよくなっていた。
俺は、一瞬だけスマホ女神のことを見直しかけた。
あんなでも、一応、本物の女神様なんだな。
「あ、りがと」
グレイシアが俺に呟いた。
その時、ドアが開いて奴隷商のおやじが3人の裸の男たちを引き連れて部屋へと入ってきた。
「お待たせいたしました、ワーウルフ様」
ガザックが男たちを俺とアザゼルさんが腰かけているソファの前に並ばせた。
俺は、裸の男たちからそっと目をそらせた。
俺も、アザゼルさんに買われてなければ、こんなことさせられてたのか。
俺は、心の底からアザゼルさんに感謝していた。
「1人目は、珍しいエルフの戦士でございます」
ガザックが俺たちに説明した。
「見目も麗しく、魔法も使えるし、この方の護衛に相応しいかと」
緑の髪の耳の長いその美しい男は、俺に向かってにっこりと微笑むとウィンクした。
なんか、背筋に悪寒が走る。
「こいつはダメですよ、セツさん」
耳元でなぜか、フローディアの声がしたような気がして振り向くと、そこには、目を半ば閉じたグレイシアが立っていた。
はい?
どういうことですか?
女神の声をしたグレイシアが囁く。
「この男は、男女問わず色仕掛けで騙して金を奪った罪で奴隷落ちしたような男です」
マジですか?
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