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第50話
6ー4 明日から特訓だ!
「とにかく、だ」
アザゼルさんが!
俺たちは、文字通り凍りついていた。
アザゼルさんの背後から変なの出てる!
黒い。
闇の中から悪霊としか思えないものが顔を出してこっちを覗き込んでいる!
これには、さすがのロイも黙り込んだ。
俺は、ひきつった笑顔を浮かべた。
「これからのことですよね?俺、がんばって魔王になりますからっ!みんな、よろしくなっ!」
「お、おうっ!」
俺の元幼馴染みたちが頷いた。
ロイは、というと。
いまいち、表情が読めない。
「そうかね」
ふぅっとその場の空気が暖かくなって妙な圧も消えていった。
アザゼルさんは、口許をいつものようにひくひくさせている。
「では、セツ君の未来のために乾杯しようじゃないか」
すっとアザゼルさんの手にグレイシアが新しいグラスを差し出し酒を注いだ。
うん。
俺は、そっとグレイシアに向かって頷いた。
ほんとに気が利くな!
こうして、俺たちの新人歓迎会は、幕を閉じたのであった。
とかいうわけにはいかず。
俺たちは、魔王連合ギルドの厨房を預かる料理長であるもふもふの歩く毛玉みたいな長毛種の猫の獣人であるランドルフさんが提供してくれた美味しい料理をひたすら食った。
いや。
マジでランドルフさんの作ってくれる飯はうまいんだよ!
ほんと。
領地に赴任したらきっとランドルフさんのことを思い出して寂しくなるのに違いない。
食べ終わった俺たちは、お茶をいただきながらデザートの新鮮な果物を食べていた。
「でも、これからどうすんだよ?セツ」
ダイナスに尋ねられて俺は、顔をあげた。
「どうするって?」
「あの剣士は、マジ、使い物にならんだろう?」
俺たちは、ちらっと部屋の隅をうかがった。
あの剣士は、心臓が強いのか、それとも、鈍いだけなのか、イビキをかいて眠っていた。
「マジで、このお荷物、どうすんだよ?セツ」
クーランドが俺にきいてきたので俺は、返事をした。
「どうもこうも」
俺は、拳を握りしめて天に向かって突き出した。
「明日から特訓だ!」
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