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第49話

 6ー3 あの夜    アザゼルさんの言葉にみなが黙り込んだ。  無理もない。  生まれながらの魔王ではないこの俺が魔王になるなんて、こいつらからしたらありえないことだろうし。  それに、俺が最弱の魔王だってことは火を見るより明らかだった。  「そのことだが」  最初に口を開いたのは、ロイだった。  「ギルド長、その話はなかったことにしてもらいたい」  「それは、できないな、ロイザール・アルデバロン」  アザゼルさんがため息をついた。  「君は、何か勘違いしている様だから言わせてもらうんだが、セツ君は、君だけのものではない」  はい?  俺は、頭を傾げていた。  アザゼルさんは、続けた。  「セツ君は、我々全ての魔王の共有財産だ。いくら、最強の魔王の称号を持つ君でも好き勝手はさせられない」  「ああ?」  ロイがぎゅっと俺を引き寄せた。  「本人の意思ってものがあるだろうが?」  うん。  俺は、頷いた。  確かに、そうですよね?  アザゼルさんが申し訳なさげに告げた。  「この場合、奴隷であるセツ君に選択権はない。セツ君は、この魔王連合ギルドの財産であって、他の誰のものでもない」  「はいはいはいっ!」  ダイナスたちが手を上げた。  「それなんですけど、ギルド長!」  「なんだい?ダイナス」  アザゼルさんに指名されてダイナスはその場に立ち上がった。  「セツを俺たち3人でギルドから買い取りたいんだ」  はい?  俺は、ハトマメでダイナスたちを見た。  なんですと?  「なら、私も、それに立候補しよう」  ロイが俺を抱いたままアザゼルさんに宣言した。  「とにかくこれは、私のものだ。最初に手に入れたのは、私なんだからな」  ほぇっ?  俺は、目を丸くしてロイを見上げた。  周囲の魔王たちがざわついた。  「ち、違うから!」  俺は、ロイの腕の中から逃れると、叫んだ。  「俺たちは、清い関係だし!」  そう。  まだ、俺は、誰のものでもないですよ?  まあ、妊娠中ですが、それが何か? 「あの夜のことを忘れたのか?セツ」  ロイが俺の耳元で囁いた。  「俺の腕の中であんなにかわいらしく乱れて達したあの夜のことを」  言わないでぇっ!  俺は、羞恥に頬が熱くなるのを隠せなかった。  

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