52 / 167

第52話

 6ー6 師匠を倒す!  それから俺たちは、朝も夕も問わずノキアの木に向かって剣を振るった。  だが、剣は練習用のなまくらなのでいくら切りつけても枝の一本も折ることができなかった。  汗だくになって剣を振るっている俺とクーランドを座って眺めていた謎のアル中没落剣士がにやにやしながら見ていた。  「無駄だぞ。お前たちが何をしてもその木の成長は止められん」  それでも俺たちは、木を切り続けた。  俺は、ふと思い付いてクーランドに女神のくれた仲間の力を増幅させるスキルを発動した。  すると。  「とあぁあっっ!」  クーランドの渾身の一撃を受けたノキアの木に一筋の切り傷がついた。  俺とクーランドは、顔を見合わせて微笑んだ。  クーランドは、日々、強くたくましくなっていった。  俺も。  クーランドみたいに目立って筋肉はつかないけど、身のこなしとか、持久力がついてきた。  ノキアの木は、そんなに急激には大きくならないと執事のグールドさんが教えてくれたので、俺たちは、午前中を剣の練習にあて、午後からは、領地を治めるために必要な勉強をすることにした。  俺たちが剣術に励んでいる間にグレイシアは、スマホ女神のもと神官としての修行に励んでいた。  そして。  2週間後。  俺とクーランドは、ついにノキアの木を斬り倒すことができた。  そのとき、ノキアの木は、もう3メートルぐらいに成長していた。  アザゼルさんは、俺たちがノキアの木を倒したのを見て感心したように頷いた。  「2人とも、なかなか立派な剣士になってきたじゃないか」  うん。  俺も、そう思う。  特に、クーランドは、いっぱしの冒険者なみの剣士、というか戦士に成長していた。  もちろん、俺だってなんとか自分の身を守れるぐらいのことはできるようになっていたし。  グレイシアも、光の魔法をいくつか使えるようになっていた。  アザゼルさんは、俺たちにそれぞれ相応しい武器を用意してくれた。  クーランドには、ミスリルの刃を持つ斧、グレイシアには、光魔法を増幅する魔導書。  そして、俺には、魔法を増幅する短剣。  これは、美しい細工が施されたものだったが、中身は、ミスリスの刀身を持つ業物だった。  「俺には何もなし、か?」  ぐうたら剣士がほざいたのを俺は、きっ、と睨み付けた。  「神は自ら助くる者を助く、だ。あんたみたいな、自分を憐れんでいるだけの男には、何も与えられないよ!」  俺は、この謎の剣士が魔王連合ギルドに連れてこられたばかりの時に、病を治癒してやっていた。  にもかかわらずこの男は、練習用の剣に触れようともしなかった。  ただ、俺とクーランドの訓練を見つめているだけだった。  

ともだちにシェアしよう!