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第53話
6ー7 ご褒美
そうして1ヶ月が過ぎた。
今ではロイが約束通り、俺とクーランドの剣術指南に毎日ギルドに通ってくれていた。
何を教わるというのでもない。
ただ、ロイは、俺たちに告げた。
「私に触れることができたらお前たちを奴隷から解放してやる」
マジですか?
俺たちは、必死にロイにかかっていったけど、ぜんぜん敵わなかった。
途中から、グレイシアも加わって1対3の模擬戦になったけど、まったく俺たちは、ロイにかすりもしなかった。
そんなある日。
俺たちは、午前中の訓練を終えて風呂に入っていた。
お互いに背中を流しあったり、強張った手足のマッサージをしあったりしていたのだが、そんな俺たちを見ていたあの剣士がバカにしたように笑った。
「いくらやっても無駄だぞ。人には持って生まれた器ってものがある。それ以上のものは、いくら望んでも決して手に入れられはしないんだからな」
「努力もしない人に、そんなこと言われたくないんだよ!」
俺は、ダメダメ剣士に言い返した。
すると剣士が俺を見てにやりと笑った。
「努力して欲しいなら、それなりのご褒美をくれよ」
はい?
俺は、湯船の中で斜め前に座っている剣士を見てきいた。
「ご褒美って、なんだよ?」
「例えば」
剣士が俺の腕を掴んで自分の方へと引きよせた。
胸元へと飛び込んでいった俺をぎゅっと抱いて剣士は、耳元で囁いた。
「お前、魔王たちの嫁候補らしいじゃないか。なら、あの連中を楽しませるように俺のことも楽しませてくれよ」
俺は、怒りで頭が真っ白になっていた。
こいつ、ダメだ!
芯まで腐ってやがる!
俺は、少し痛い目を見せてやろうと思った。
「いいよ。明日、朝。訓練の始まる前にクーランドと試合して、もし、あんたが勝ったら何でもあんたの言うことをきいてやるよ」
「その言葉、忘れるなよ」
剣士は、俺の首筋を舌でぺろりと舐めあげた。
「楽しみにしているぞ、セツ様」
「ふぁっ!」
俺は、背中がぞくぞくするのを感じて仰け反った。
こいつ!
耳、噛みやがった!
剣士は、俺をそっと湯船に下ろすと立ち上がり風呂場から出ていった。
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