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第76話

 8ー8 奴隷紋  俺たちのカードの右上には見たこともない紋章が入っていた。  「何、これ?」  「知らないのか?」  クーランドは、驚いていた。  「奴隷紋のことを」  『奴隷紋』とは、奴隷の証の紋章で普通の奴隷ならみな、体のどこかに持つものらしい。  というか、焼き印?  クーランドが俺に自分の肩に押された奴隷紋を俺に見せながらにっと笑った。  「奴隷紋は、魂にまで刻まれる紋章だ。押されるときの痛みは半端じゃねぇ。だけど、俺は、泣かなかったぞ」  マジか。  俺は、そんなもの押されていなかった。  「お前、は、奴隷紋を、押さ、れる前に、買われ、た、から、な」  グレイシアが教えてくれた。  「それ、に、アザゼルさん、が、魔王の母、に、奴隷紋など、押させ、ない、し」  そうなんですか?  俺は、アザゼルさんに感謝した。  マジで、あの人は、俺を大事にしてくれてるんだな。  「でも、奴隷紋がついたカードを持つ者が冒険なんて許されるのか?」  俺が尋ねると、ギルドのお姉さんが答えてくれた。  「よくある話ですよ。奴隷が一発当てて自分を買い戻すために冒険者になることって」  そうなんだ。  俺たちは、お姉さんのすすめで、まず初心者用のクエストをこなすことにした。  王都ルミニスの西の外れにある帰らずの森に自生するセイタカブクブク草の採集というものだった。  なんにせよ、俺たちが受けられる依頼は、今はこれぐらいしかなかった。  「パーティ名を登録しておこう」  アルバートおじさんは、そう言ってギルドのお姉さんに何かを囁いた。  お姉さんは、頷くと俺たちのカードにパーティ名を刻んでいった。  『自由の翼』  それが俺たちのパーティ名だった。  「普通は、登録したばかりの方たちは最低ランクの依頼しか受けられませんが、みなさんは、パーティに上位ランクの方がおられるので次からは上のランクの依頼も受けられます」  お姉さんがアルバートおじさんに意味ありげに微笑んだ。  何?  この感じ。  「そろそろ行くぞ」  アルバートおじさんは、お姉さんに背を向けると歩きだした。俺たちは、アルバートおじさんの後について歩きだした。

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