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第82話
9ー1 お仕置きですか?
アザゼルさんは、俺を横抱きにしたまま魔王連合ギルドまで帰っていった。
すれちがう人たちにじろじろと見られて、俺の精神はがりがりと削り取られていった。
恥ずかしすぎる!
ギルドに戻ってもアザゼルさんは、俺を下へおろさなかった。
アザゼルさんは、いつも口数の少ない人だけどさらに無口になっていて、俺の胸を不安がよぎった。
もしかせずとも、怒ってる?
アザゼルさんは、俺を抱いたまま魔王連合ギルドの奥へと運んでいった。
そして、地下室へと続く階段を降りていく。
なんか、空気が湿っていて、すごく静かで。
かつん、かつんっと足音だけが響いていて嫌でも俺の不安はつのっていく。
地下室には、いくつかの古びたドアがあった。
アザゼルさんは、そのうちの1つを足で蹴り開けた。
ドアが開いた瞬間に、もあっと嫌な感じの臭いが漂ってくる。
「ここ、は?」
「ここは、奴隷のお仕置きのための部屋、だ」
アザゼルさんは、そう言うと俺を部屋の片隅に置かれていた石の椅子に座らせると椅子に縛り付けた。
「あの・・アザゼルさん?」
「ここは、しばらく使っていなかったからな。少し、かび臭いが堪えてくれ」
アザゼルさんは、俺の耳元へと口をよせて囁いた。
「すべて、君が悪いんだぞ、セツくん」
硬い声に、俺は、体を強張らせた。
「冒険者になった初日から朝帰りなんて、あまり誉められたことではないんだよ?セツくん、君は、なにしろ我々の奴隷なんだからね」
はい?
アザゼルさんが俺に背を向け部屋を出ていくのを見て俺は、はぁっとため息をついた。
ああいうタイプが1番敵にまわしたくないタイプだな。
1人だけ取り残されて硬い椅子へと拘束されて部屋の中をぐるっと見回した。
部屋の中は、埃の臭いがしていた。
なんか、空気が湿っていて、クモの巣があっちこちに張っているし、薄暗いし。
俺は、びびっていた。
早く、ここから出して欲しい。
しかも目が慣れてくると、部屋の壁に架けられた何に使うのかも考えたくないような道具が目に入ってきた。
俺、どうなっちゃうわけ?
しばらくすると、足音がきこえてきて扉が開かれた。
「セツ様」
グールドさんが木製のトレイを持って入ってきた。
うん。なんかいい匂いがして、俺の腹がぐぅっと鳴った。
わゎっ!
俺は、頬が熱くなるのを感じた。
グールドさんは、黙ったまま、俺にその湯気のたつ粥のようなものを匙で一口づつ食べさせてくれた。
「あの、自分で」
「いけません、セツ様。今は、セツ様を自由にすることは許されておりません」
グールドさんは、冷淡そうに俺に告げると業務的に粥を食べさせた。
仕事がすむとグールドさんは、静かに部屋を出ていった。
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