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第142話
13ー12 スパイしてた?
俺の知っていた頃の恵は、茶髪でちょっと風変わりな印象のするイケメンだった。
それが、このクライアドの地に来たとたん変化していった。
どうやら、こいつも姿を変えていたらしい。
恵は、青みがかった銀髪に、冷たい青い瞳を持つ美青年へと変化していった。
「私の名は、スィラ・ノイスジーラ。この国の王太子であり、存在する唯一の聖騎士であり、セツさん、あなたのはとこでもあります」
はい?
俺は、キョトンだった。
俺のはとこですと?
「驚くのも無理はありませんが、実は、私の母である聖女カーミラとセツさんの母上のクレア様は、いとこだったのです」
スィラは、説明してくれたが、俺は、まったくのハトマメだった。
俺は、考えていた。
もし、こいつの言うことがほんとなら、俺たちは、身内ということになるな。
「驚かれるのも無理はない。この世界は、異世界から来たセツさんにとっては、おかしなところだらけでしょう?」
「というか、お袋が追放されたのって、聖女に対する嫌がらせが原因じゃないの?それが、いとこって」
俺は、さりげなく辺りを見回しながらスィラに話した。
「意味わかんねぇし」
「あなたのお気持ちは理解できます、セツさん」
スィラは、俺をまっすぐに見つめていた。
イケメンすぎて、まぶしいぜ!
俺が視線をそらすと、スィラがため息をついた。
「やはり、怒ってますよね?でも、全ては、私の叔父であり母カーミラの兄である宰相エイダス・フロウのせいなのです」
「エイダスって、あんたの叔父さんなわけ?」
ってことは、お袋のいとこなのか?
俺は、頭がぐるぐるしてきていた。
うん?
俺は、目の前の元後輩のことをじっと凝視した。
「つまり、エイダスは、昔から俺のことお前を使ってスパイしてたってことか?」
「まあ、ありていに言えば、そうですね」
スィラは、あっさりと認めた。
「確かに、私が異世界に出向いてセツさんの動向を監視していたのは、事実です。しかし、私は、ずっとセツさんを見ているうちに疑問を持つようになっていました」
「なんの疑問だよ?」
俺が訊ねると、スィラは、ぼそっと答えた。
「叔父は、あなたの一家を危険分子と見ていました。でも、実際には、そんなことはなかった。あなたは、普通の学生でしかなかったし、あなたの母上ももう、この世界のことなど忘れているようだった」
いや。
忘れてなかったから、俺をここに送り込んだんじゃね?
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