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第145話
14ー2 吾妻よ!
「お前がなんと言おうと、お前も、お前の子も私の物だよ、セツ」
エイダスが俺の頬へと手を伸ばして触れてきた。
「その証に、お前は、私を拒むことができない」
エイダスが冷たい指先で俺の唇に触れた。
背筋がぞくっとして。
俺は、吐き気がしていた。
なのに、俺は、動けなくって。
エイダスは、俺の唇を開かせると、口中へと指を入れてきた。
「このかわいい唇も、舌も、全てが私の思うまま、私を求めてくるのだからな」
俺は、無意識のうちに奴の指を舌で舐め、ちゅぅっと吸い付いていた。
なんでっ!
俺は、目尻に涙が滲んでいた。
嫌で嫌でしょうがないのに!
こんなこと、したくもないのに!
俺は、懸命にエイダスの差し出した指を舐めながら、嗚咽を漏らした。
エイダスは、俺に囁いた。
「いい子だ。今宵、我々は、真に結ばれる。本物の揺るぎない夫婦となるのだ、セツ・グレイアムよ」
「んぅっ・・」
ちゅぽん、と音をたてて抜かれた指を俺の舌が名残惜しげに追いかけた。
俺は、本当に嫌で。
涙が溢れる。
その涙をエイダスは、指先で拭うと、それを舌でペロッと舐めた。
「今夜、お前が哭くのは歓喜の涙となるだろう。たっぷりと可愛がってやる。楽しみにしているがいい、我妻よ」
俺は、口許きけなくって。
ただ、ぼんやりと立ち尽くしていた。
その俺の頬へと、エイダスは、口づけをした。
「愛しているぞ、セツ」
足音が遠ざかり、奴が部屋を出ていく。
俺は、呪縛から放たれたようにその場に崩れ落ちた。
涙が。
溢れてくる。
俺は、慟哭した。
なんで?
なんで、俺は、あんな奴に好き勝手にされるんだ?
「セツさん・・」
スィラが俺の肩へと手を置いたのを、俺は、振り払った。
「触るな!」
スィラは、俺を一瞬、傷ついた子供みたいな目をした。
俺は、涙を拭うと立ち上がった。
「お前、全てを知ってて俺をここに連れてきたんだろう?なら、全部、話せ!知ってることを丸っと全部、だ!」
「しかし」
スィラが迷っているのに、俺は、食い下がった。
「話せよ!全部!俺は、全てを知る権利があるだろ!」
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