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第26話
「仲直りセックスしよか……俺の名前、なおりだけに……」
「おもんないねんッ。もっかい喧嘩したいんかドアホッ」
「ユキ、愛しとるよ」
「ぉひっ」
「ユキめっちゃ好きや、大好き……もぉ我慢したない……ユキが好きやもん……好きやから、いっぱいやらしいことしたい」
「す、好き好き言うたらヤれると思うなよ!」
雪が必死に拒否すると、直は「あかんか……」としょげたものの、さわさわと雪の腰をなでている。引く気はないらしい。
「俺、オカンのエロ本で勉強してきたで?」
「勉強ってなんの?」
「ん……? んと……なんか、かわいいゲイが『おちん✕んしゅごいぃぃ』って、言うとったな……」
「それ低音ハスキーボイスのお前が真顔で言うセリフとちゃうわ。やめぇ」
「基本『けちゅま✕こ』とか……『らめぇいっちゃうぅ』とか……そんなん多いねん」
「やめぇって言うとるやろ口に出すなこっちが恥ずかしいねん!」
「? 恥ずかしない」
「お前はな!?」
知識を披露してオーケーを貰うことしか考えていない直に、雪は呆れ半分照れ半分で睨みをきかせた。
直の母も、まさか自分の持っている卑猥な趣味本のセリフを低音ハスキーボイスの息子が真顔で読み上げているとは夢にも思わないだろう。
というか冷静に考えると直の母が悲惨すぎる。隠していただろう趣味本が息子にバレバレなんて、雪なら宛のない旅に出る案件だ。
「ただの漫画のセリフやん……」
「ただのちゃう。エロ本や」
「そか……? 大事なとこ白くて、あんまエロさ感じんかった……」
「そもそもお前おばちゃんのコレクション勝手に読み漁るんやめ。たぶん絶対息子に読まれたないやつやで」
「ユキの寝込みのがエロい……」
「聞けやぁ!」
流石に一発殴ってやろうとすると、途端に直は口にチャックをつけた。
雪の怒りにも敏感な忠犬め。それだけよく見ているということで……ズレていても一直線な直に、報いるべきだろう。
雪はうぅぅ、と唸り、十分に苦悩してから、どうにか腹を括る。
「セックスは、せん」
「…………」
「でもっ、……一緒に、抜く」
「え?」
意を決して口にすると、お口にチャックをして拗ねていた直が勢いよく顔を上げた。
そんなにマジマジと見ないでくれ。こちとら今年一発目の全力譲歩だ。
「一緒に抜くん……?」
「っや、やってしゃあないやん……っ」
ポカンとする直に見つめられながら問われた雪は、カァァァッと耳まで熱くなった。
頬に水滴が浮かび上がる。熱い。蒸発しそうだが、自分の体温上昇くらいじゃそこまでドロドロに溶けたりしない。
「中に触られんのは怖いし、俺の手ぇほんま氷並みにひゃこいから、ナオの触ったらナオのも手ぇも縮こまるやろ……? セックスあかんって言うたら、一緒に抜くくらいしかやれへんねん……!」
あれだけ言われちゃ、雪とて気持ちの上では直に抱かれてやりたかった。
貞操を大事にする性格でもないのだ。
セックスなんてしたことがなくても、本音を言うと、凄くしたい。人と交わるということがどんなものか、凄く気になる。
しかし怖いものは怖かった。
服の上からならまだ触られるのも触るのも我慢できるので、ここはこれで一つ。
だって、今なら雰囲気やテンションも込みで、直に勃つ気がする。
「自分でシてんのなんか、人に見せれへんけど……ナオやったら、まぁ……ええわ」
そんな気持ちで提案しジワジワと溶ける赤らんだ雪を前に、直は雪の足の間をジーンズの上から強くなで上げた。
「うっ……!」
「そんなんめっちゃ嬉しい……」
「ナ、ナオ、あんま触らんといてっ」
「ほなはよシよ……? 我慢できん……俺、足絡めたままがええな……ユキ」
「わかったから、っひ」
接触避けする雪に許されたことが余程嬉しいらしく、直は雪の足に自分の足を絡ませて雪を煽る。
カリカリスリスリと執拗に触れられ、雪は慌てて手袋を脱ぎ捨てた。
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