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第2話

 とある高校の職員室の喫煙席で一人の教師がタバコを吸っていた。  前髪を整髪料で固めてオールバックにし、縁の太いメガネをしている。そして気怠そうにタバコの煙を吐き出して日頃の不満も一緒に出しているようだった。  32歳、槻山湊音《つきやまみなと》。高校教師、国語担当。年齢の割には老けて見える。  そこに上司の大島がやってきた。彼もタバコをすぐ取り出してジッポーで火をつける。 「槻山先生、溜まってますなぁ」 「そうっすかね」 「離婚してから独身生活満喫してるんじゃねえのか」 「全然」 「実家戻ったから楽だろ」 「まぁ、何やらなくてもいい」 「贅沢だな」 「結婚しててもしてなくても変わりない」 「そんな考えだから奥さんに愛想尽かされるんだろ」  湊音はつい先日離婚したばかりだった。すると大島が両手を合わせて湊音に懇願する。 「そんな槻山先生にお願いがある」 「嫌だよ、あんたのお願い事はろくなものはない」 「まぁな」  大島は笑う。彼は湊音の恩師でもある。大抵「先生」と休み時間なのにそう言う時は何かしら裏がある。  大島は湊音に一つのチラシを渡した。 「婚活パーティー、行こう。いや、ついてきて欲しい」  同じく独身の大島。もう40歳。手を合わせて湊音に懇願する。もちろんチラシ片手に湊音は乗り気ではない。 「美味しいご飯も食べられるし、お酒も飲み放題。そのついでに女の子と出会える、いいとは思わない? な、なぁ!」 「う、うーん」  湊音は眉をしかめる。  この誘いがなかったら彼の人生は変わっていたのだろうか。

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