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第21話
とある夜。寝ている湊音を眺める李仁。見つめる先は湊音の指。
『サイズを図るには今しかない……』
指のサイズ。そうである、李仁は湊音へのプロポーズを考えたのだ。
彼自身、ゲイである自分が誰かにプロポーズするということは思ってもいなかっただろう。どちらかといえば待ってる方であった。
『指輪でプロポーズってありきたりすぎるわよね』
いろんなことは交際していた男性にしてもらった方だと李仁は思うがプロポーズや結婚までは進んだことがなくステレオタイプな方法しか思い浮かばないようである。
そーっと湊音の手を取り、薬指に布メジャーを巻きつける。そしてサイズをスマホにメモをする。
「んんんっ……何してるの、李仁!」
「ああああっ、その!」
李仁は布メジャーを慌てて湊音の指から引き抜く。
「何この紐? メジャー?」
「そ、そのー。ミナくんのあれの太さを知りたくて」
とっさに嘘をつく。でも確かにその太さも知りなかったわけで……。
「なんだよ、こんな夜に。てかコンドームXLだからそれくらいだよ?」
「でも知りたいなって。測っていい?」
「いいよ、ってバカ」
「だめよね、おやすみ……」
てな感じで測ることができなかった。
李仁はようやくなんとかして測ったサイズをもとに宝石店に行く。だがどのお店も最初は快く迎えてくれるが相手のサイズを書く際に明らかに男性サイズであることに気づいた店員が少し顔色を変える。
そして名前の刻印ができると言われ、湊音の名前を書くと尋ねられた。
「あの、失礼ですがお相手の方は……」
「その……男です」
苦い顔をする店員。
「あの、シンプルなデザインで……ペアリングがあればと」
「ですよねぇ……もう一つは女性のデザインですからね」
男性用は本当にシンプルで、女性用はとても華美なものが多い。
李仁はシンプルな指輪が気に入ったがペアリングでは両方ともシンプルなものがなかった。
李仁の顔が曇る。すると店員の女性がこう提案した。
「メンズのものを組み合わせてお出しすることもできますよ。これならとてもシンプルでいいかと」
李仁が気に入ったメンズ用の指輪二本を同じケースに入れてくれたのだ。
「この間は女性同士でお求めに来られた方もいるんですよ。その時はレディース用二つお出ししたのですがお二人ともシンプルなものが良いと……」
と店員は微笑む。そのようなことはイレギュラーであるがそう対応していた過去があったのだ。
「実は今のところ私の経験では男性の方が男性とのペアを一人でお求めに来られたのはお客さまが初めてでして。このお店は女性が好むようなデザインが多いですし、なかなか男性一人で入ってくるのが恥ずかしいかもしれません」
「私は平気なんだけどなぁ……」
「ありがとうございます、でも最近は多様性とか言われていますし、いろいろ考えさせられます……」
実は李仁、何も気にせずふと足を止めたお店であって、店員の言うようなことには気づかなかった。
「こういう対応してくれるのは嬉しい。他のところだとやんわり断られたの」
と数軒回ってからたどり着いた店でもあるのだ。
「お相手の方、喜んでらえたら嬉しいです」
「そうね、まさかもらえるなんてってびっくりしそう」
「サイズ変更もできますから、サイズもこっそり計られたんじゃないですか?」
「……わかった? そうなの、寝てる時にメジャー巻きつけて」
「まぁっ! バレませんでした?」
「測ってから目が覚めちゃって……バレるところだったわー」
と店員との会話が弾む。李仁はこの店で指輪を作ることを決め、数週間後に出来上がった指輪見て気持ちが高まったのである。
「うまくいきます! ご報告お待ちしてますね」
「ありがとう。また彼と来ます」
『……あとは渡すだけ!』
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