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第22話
湊音と李仁はお揃いの半ズボンとTシャツ姿でベッドの上でいちゃつきながら旅行雑誌を見ている。
二人は同棲を始めてからなんだかんだでうまくいっている。
実は今度の夏休みに二人で北海道旅行に行くことになったのだ。
「ねぇ、あと少しだね。楽しみ」
「わたしもよ、福利厚生でいいホテル取れたし」
「ねぇ、コンドームいくつ持ってく? 四泊するから」
「もぉ、ミナくんったらぁー。旅行行くんだからぁ、疲れてできなくなるかも」
「いい夜景を見てそれ見ながらムラムラしちゃうかもよ」
「いやーん、襲われること決定?」
二人は脚を絡ませキスをする。
「違うーっ、李仁に襲われそう」
「うん、襲っちゃいそう。ミナくん可愛いから……」
と李仁は湊音に覆いかぶさる。だが李仁の頭の中ではプロポーズをいつしようかとぐるぐる巡らせる。
「富良野のラベンダー畑楽しみだなー」
と湊音がそういうと、李仁は
『ラベンダー畑の前でプロポーズもいいかも』
と思いついたのだ。富良野は4日目。夜は福利厚生でホテルの最上階。プロポーズして夜は……と思いを巡らすとニヤニヤが止まらないのか顔に出ている。
「李仁、何ニヤニヤしてるの?」
「べ、別に……」
「たくさんおいしいもの食べて、いい景色も見ようね」
「うん」
二人はキスをした。
旅行当日。様々な観光地に訪れ写真をたくさん撮り、料理も食べ、夜は案の定疲れて爆睡。
二人で旅行するのは初めてであり、なかなか休みが取れない二人は久しぶりのリラックスタイムを好きな人と過ごせるのが幸せである。
「李仁とたくさんこれから旅行行きたい。日本だけじゃなくて世界中!」
「私も。ミナくんとの旅行楽しいですもん」
「僕も!」
旅行中はなぜか湊音は堂々と李仁と手を繋ぐ。
「恥ずかしくないの?」
「……なんか恥ずかしくないみたい。だって好きな人と手を繋いで旅行するの、幸せ」
「じゃあ帰っても手を繋いで歩こう」
「うーん、それは無いな」
「ええーっ!」
そうこうしている中、実は湊音は考えていた。李仁が旅行前から落ち着きがないことに気づいてはいた。
旅行も3日目の夜。この日も疲れきって李仁は寝てしまった。明日、レンタカーを借りて富良野まだ行くため、体力温存したいとのことであった。彼の寝顔を見ながら湊音は
起きて夜景を見ていた。
『なんとなくなんか明日……プロポーズされそう、なんちゃって……』
と淡い期待を抱いていた。
そして次の日の朝、レンタカーを借りて二人は富良野に向かった。移動距離が長いがその間にいろいろ会話をしたり、途中でお店に立ち寄ったり。
この時間も貴重である。二人で過ごす時間、楽しむ時間、二人は幸せそのものであった。
「ラベンダー畑、楽しみ。母さんがラベンダーの匂い好きだからお土産買って送ってあげようかな」
「そうなの。石鹸とかドライフラワーとか香水とか色々買ってあげましょ」
李仁の頭の中はプロポーズのことも考えつつも無事に辿り着けるのかドキドキしている。
湊音はどこでプロポーズされるかなとドキドキ。二人とも落ち着かない。
そしてラベンダー畑についたのだが……。
「ねぇ、ミナくん……」
「うん、李仁……」
目の前は想像していた紫の景色は無かった。そして隅の方でラベンダーを、刈っている人たちがいた。
なんとラベンダーの収穫の時期であったのだ。二人はなかなか休みが取れず夏休みの終わりの時期にしか取れなかったのだ。
「ラベンダー刈るところってなかなか見られないから貴重だよね、李仁……」
「そ、そうよねぇ」
いつもポジティブな李仁がポカーンとしている。
「そういえば奥にひまわり畑あるって雑誌に書いてあった!」
「ほ、ほんと? じゃあ行きましょう!」
と二人はひまわり畑に向かう。
が、ひまわりは全て枯れて元気がなかった。
「……そうよね、時期が時期だしね」
「うん、元気のないひまわりもなかなか見れないしね」
普段ネガティヴなことを言う湊音がなんだか今日はポジティブである。
李仁は頭をかいてもじもじする。ここには他に誰もいない。二人はなんとも言えない雰囲気になった。
だが李仁は湊音を見つめて話を始めた。少し照れ臭そうである。
「私ってさ、カッコつけようとするとどうもうまくいかないみたい」
「えっ?」
「あのさ……」
もじもじする李仁。湊音は察した。彼がしたいことはわかったのだ。
『……李仁……』
湊音は彼を見上げる。
「ミナくん、こんな私だけど……それに、色々これから乗り越えなきゃいけない壁はあるけどさ……」
少したどだとしく、顔を赤らめながらもいつもよりも真剣な眼差しの李仁。湊音はこみ上げる気持ちを抑えながら見つめる。
「私と、これからも共に生きていきましょう。結婚してください」
李仁の手には指輪のケースが。そしてひらき、そこには指輪が二つ。
湊音は糸が切れたかのように、気持ちが破裂して涙溢れ出た。
「李仁ぉっ……」
「恥ずかしいっ」
李仁も涙が溢れた。反応がとても気にっていたのだ。
「私も、李仁とならこれからもずっと一緒にいられる! これからもよろしくね」
「うん……もちろんよ。ミナくん」
二人は抱きあった。李仁のプロポーズは大成功であった。
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