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4-②
きょとんとする啓介がとぼけているように見えたのか、直人は問い詰めるように机を指でトントン叩く。
「水臭いじゃん、言ってくれればいいのに。この前見ちゃったんだよね、お前んちの近くのスーパーで仲良く買い物してるところ」
その一言で全てに合点がいった啓介は、脱力しながら教室の天井を仰いだ。
「……なるほど。僕と一緒にいた人ってさぁ、チョコレート色のゆるふわ髪じゃなかった? そんで、僕は荷物いっぱい持たされてたでしょう」
「うん、そう。結構可愛かった。あの啓介を荷物持ちに使うなんてスゲーって感動した」
「あーもう。だから嫌だったんだよね。恥っず」
頭を抱えて呻く啓介を、直人が不思議そうに眺める。
「ん、どした? 内緒の恋人だったわけ?」
「違う、恋人じゃない。あれ母親」
「またまた、そんな見え透いたウソを」
「ウソじゃないって、今度会わせてあげる。近くで見たら僕と似てるよ。あーあ。母親と買い物とか、恥ずかしいとこ見られたの超ショック」
啓介は突っ伏して、大袈裟に落ち込んで見せた。ひんやりした机は、赤く火照った頬を冷ましてくれて気持ちがいい。そのまま顔を横に向けたら、机に顎を乗せている直人と視線が合った。直人は手を伸ばし、啓介の目にかかる前髪を横に流しながらククッと笑う。
「そっか、彼女じゃなかったんだ。お前の母親ってスゲー若いな。でも偉いじゃん、荷物持ちするなんて」
「だってさぁ、半泣きで電話してくるんだもん。『車のつもりでいっぱい買っちゃったけど、歩いて来たこと思い出したから助けて』って。どーしょもないでしょ?」
「あはは。それでちゃんと助けに行ったんだ。お前にも人の血が流れてたんだなぁ」
「ねーそれどういう意味? まるで僕が冷たい人間みたいじゃない」
啓介の前髪に触れていた指先を引っ込めながら、直人が口角は上げたまま静かに目を伏せる。
「冷たいじゃん。俺を置いて行っちゃうんだから」
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