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第6話 Bring it on!

「いい子を捕まえられて良かったわ。じゃあ、私は客席に戻るわね。慌てないでと言っても無理だろうけど、落ち着いて。笹沼さんなら大丈夫よ」  緑川は笹沼の肩を励ますように叩き、足早にバックステージからフロアへ戻っていく。その姿を見送りながら、啓介は気まずそうに頬を掻いた。 「あのさ。今更なんだけど、僕ここの生徒じゃないよ。部外者が出ちゃっていいの?」 「あぁ、うん。それは全然問題ない。みんな外部の人に交渉する時間もコネも無いから、友達や後輩に頼んでるだけ。だから本音を言うと、結果オーライかな。プロのモデルさんに出て貰えるんだから。まぁ、一時はどうなるかと思ったし、倒れちゃった子には申し訳ないから大きな声じゃ言えないけどね」  笹沼の言葉を聞いて、啓介は「ん?」と首を傾げる。 「僕、プロじゃないんだけど。てゆーか、そもそもモデルなんて初めて」 「えっ、嘘でしょ。さっきの脱ぎっぷり、ステージ慣れしてるんだと思ってた! ウォーキング練習なんてしてる時間ないよ、どうしよう」  笹沼が悲鳴のような声を上げ、作業の手を思わず止めた。  ふいに流れていたランウェイミュージックの曲調が変わり、笹沼と里穂が同時に顔を見合わせる。 「ヤバイ、前のチーム始まっちゃった。笹沼、もう他に方法ないもん。後はこの子を信じて運を天に任せよう。キミ、カラコン付けたことある? これ入れちゃって」 「鏡見ないでやったことない」 「大丈夫、大丈夫、頑張って。ほら、早く」  里穂に急かされながら、手渡された真っ赤なカラーコンタクトを目に入れた。

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