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7-⑤

「現実的な話?」 「ええ。まず来週の撮影で、キミが雑誌に載せてもいいと思える写真が撮れたとしましょう。その後、リューレントの姉妹誌で専属モデル契約を結び、コンスタントに誌面に登場したとする。その状態で桜華大を受験すれば、特待生枠で合格できる可能性が高いわ」 「そんな。合否なんて今の段階で言っていいの?」  予想以上に現実的な話に、戸惑いながら啓介が問い返す。緑川は静かに頷き話を続けた。 「可能性の話よ、確実とは言えない。でもね、今までも現役で活躍するモデルや既にコンテストで賞を獲った子なんかは、特待生として迎え入れているの。大学としても優秀な子に来てもらいたいし、宣伝にもなるからね。ちなみに特待生になれば、入学金も授業料も免除よ」  リアルな数字に思わず息を呑んだ。それだけの費用が浮くのは、この上なく有難い。 「キミは世間に顔を晒したくないと言っていたわね。もしモデルをしていることを伏せたまま、一般生徒として大学に通うなら、残念だけど特待生枠には入れないわ」 「あぁ、そっか。広告塔にはなれないし、特待生の条件を満たせないもんね」 「そう言うこと。だからいっそのこと、メイクをしたまま素顔を隠して大学に通うのはどうかしら。それなら特待生の条件を満たし、尚且つ顔も割れなくて済むわ。個性的なファッションの子が多い学校だから、その格好でも浮くということはないでしょう」  それもアリだなと呑気に考えた啓介に向かって、「ただし」と、緑川は厳しい顔で付け加える。 「現役モデルで特待生。そんな鳴り物入りで入学すれば、いやがおうでも注目を集めてしまうことを忘れないでね。良くも悪くも、あなたは他の生徒の解りやすい目標になってしまう。足を引っ張られるかもしれないし、妬みの対象になるかもしれない。身に覚えのない中傷を受けるかもしれない。見知らぬ人から狂信的に慕われるかもしれない」  緑川があまりにも具体的に話すので、啓介はぞぞっと身震いした。

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