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7-④

「保護者の同意書取得も含め、本契約までのマネジメントは私が引き受けましょう。撮影当日も付き添います」 「緑川さんが? それは有難いけど、珍しいね。そこまでしてくれるなんて」 「こうなるきっかけを作ったのは私ですし……。まぁ本音を申し上げますと、この子がどう化けるのか見てみたいと言う、ただの好奇心です」    緑川の返答に、海藤が愉快そうに肩を揺らす。 「好奇心か、それは納得だな。では、よろしくお願いします」  颯爽と立ち去る海藤の背中を眺めながら、あんな風に格好良く年を取りたいものだと啓介は思った。三十年後の自分をぼんやり思い描いてみたら、ガチャガチャしたイメージが湧いた。しかし、それはそれで悪くないような気もする。 「さて、じゃあ住所と連絡先を教えてくれるかしら。キミ、家は近いの?」 「遠いですよ。特急列車で二時間くらい」 「ああ、そんなの近い近い。北海道や九州からこの学校を見学に来る子もいるんだから。じゃあ、都内の電車の乗り継ぎは大丈夫そうね。待ち合わせはスタジオの最寄り駅にしましょう。不安なら迎えに行っても良いけど」 「大丈夫。一人で行けます」    手帳に連絡先を控えながら、緑川は短く「そう」と返事をした。それからゆっくり顔を上げ、啓介の目を真正面から見据える。 「すぐに終わるから、このまま立ち話でいいかしら。少しだけ、現実的な話をしましょう」  緑川の目に宿る迫力に、啓介は少しだけ怯んで身構えた。

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