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10-⑤
今の撮影で、この日のスケジュールは全て終了だったらしい。セットを片付け始めるスタッフと入れ替わるように、啓介はスタジオの隅で見守ってくれていた緑川の元へ戻る。何だかまだ夢見心地で、足元がふわふわしていた。
緑川の側にいた永遠が子犬のように跳ねながら遠慮なく飛びついてくるので、思わずよろめいてしまう。
「お兄さん、凄く凄くカッコよかった。私も隣に並びたかった。ねぇ、お兄さん次の撮影も来るよね?」
「そうね。まぁ、来るつもりでいるけど」
右腕にぶら下がる永遠を引き剥がしながら、啓介が答える。
「じゃあさ、私と同じ事務所に入らない? まだ決めてないんでしょ」
「永遠と同じ事務所?」
相変わらずぴょんぴょん飛び跳ねる永遠の後ろから、スーツ姿の若い男性が一歩前に進み出た。啓介に向かって名刺を差し出し、恭しく頭を下げる。
「永遠のマネージャーの倉持 です。緑川先生にもお話させて頂いたのですが、ぜひうちの事務所に来ていただければと思いまして」
名刺を受け取りながら、啓介は緑川を見た。緑川は軽く頷いて「良いと思うわ」と口を開く。
「規模は大きくないけど良い事務所よ。所属している子達を、とても大事にしてる。本当は快くんの所も良いと思ったんだけどね。あなた、あの子と合わなそうだから」
言いながら緑川が控室の方に視線を向けた。快はさっさと着替えに戻ってしまったらしい。
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