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12-⑤
「お兄さんはさぁ」
光沢のある素材のベストを啓介にあてがいながら、永遠が静かに口を開く。
「リューレントで堂々と単独でページを飾ったでしょ? そんな扱い、この場にいる誰も経験したことないの。つまりね、お兄さんはここでナンバーワンってことなんだ。あの瞬間、ブレイバーの絶対的なエースになったんだよ」
「……絶対的な、エース」
思いがけない言葉を聞いて、啓介は噛み締めるように呟いた。永遠の口調はやけに大人びていて、実感がこもっている。
「今のところ私たちだけなんだよ、ブレイバーと専属契約してるの。他のモデルさんは次も呼ばれるかわかんないし、呼ばれたって小さなワンカットしか載らないこともザラなんだ。だからさ、どうしたって羨ましいって思われちゃうよね。憧れと嫉妬の目で見られちゃう。お兄さんは特に」
永遠から向けられる眼差しは、憂いと慈愛に満ちていた。既にモデルとして活躍していた永遠には、これから啓介の身に降りかかる事柄が、ある程度予測できてしまうのかもしれない。労わるような潤んだ瞳で見上げられ、啓介は「そう」と小さく相槌を打った。油断していると、その目に飲み込まれそうになる。
まだ幼さの残るあどけない永遠は、それでも確かに清廉な色気を放っていて、やはり『魅せる側の人間』なのだなと強く感じた。
「心配してくれてありがとうね、永遠」
桃のように瑞々しい永遠の頬を指の背で撫でると、永遠は目を細めてその手に擦り寄った。自分によく懐いている小動物のようで愛らしく、抱きすくめたい衝動が一瞬湧く。
視界の端に映っていた快の影が、ゆらりと動いた。
「俺は認めてないけどな」
永遠から引き剥がすように、快が啓介の手を掴んだ。こちらを睨みつける快の青い瞳は冴えていたが、掴まれた手はとても熱い。
「すぐに俺が一番だって、みんなに知らしめてやる。お前は束の間のトップの座、せいぜい味わっておけよ」
「……トップとか別に興味ないけど、快に追い抜かれるのは面白くないね。悪いけど、簡単には譲らないから」
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