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12-⑦
「そうねぇ」
いつになく真剣な目でこちらを見る永遠に、少し困りながら啓介は視線を上へ逸らす。天井に張り巡らされた照明用のパイプや配管は、まるで迷路のようだった。
「自分が作った服を、誰かが着たいと思ってくれたら幸せだよね」
「じゃあ、自分のブランドを立ち上げるのが夢なんだ」
「うーん。そうなんだけどねぇ」
改めて言葉にされると、何だか少し違うような気もした。天井を見上げたまま、「ああ、そっか」と啓介が笑う。
「仲間も欲しいな。一緒に秘密基地を作ってそこにずっと籠っていたくなるような、わくわくする仲間。迷路みたいにねじれまくってる道でも、頑張って進んでたらいつか会える気がする」
「仲間ならもういるだろ。俺と永遠」
不貞腐れたような声を出す快に、啓介は「快って仲間だっけ?」と本気で首を傾げた。
「名無し、お前そーゆーとこだぞ。ほんっと腹立つなぁ。仲間だろ? そんで暫くは、永遠の家が秘密基地な」
「名無しじゃなくて氷雨だってば」
「じゃあ俺のことも快晴って呼べよ」
再びにらみ合う二人の背中を、永遠が軽くたたきながら溜め息をつく。
「まぁまぁ。ブレイバーを盛り上げる仲間には違いないんだしさ、今は力を合わせようよ。いつか大人になった時、ねじれまくった迷路を進んだ先で、また三人で会えたら良いね」
「氷雨の行く道は悪天候そうだなァ。嵐に巻き込まれて溺れるなよ」
「快晴の行く道だって。太陽に負けて干からびないようにね」
牽制するような視線を送り合い、そのあと三人同時に吹き出した。
嵐の旅路も上等だ。きっと順風満帆とは程遠い。
それでも。
土砂降りの雨の中、びしょ濡れでも笑い飛ばして前へ進もう。
この道の先で待っている、未だ見ぬ誰かに会うために。
【?】This story is to be continued.【?】
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