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第4話

 次の日、和希が授業を終えて家に帰ると、見知らぬ青年が和希を出迎えた。 「初めまして。RH5703ーY03です。どうぞよろしくお願いいたします」 「何いってんの? ユキはどこ? ユキ……っ!」  慌てて家の中を探し回るが、ユキの姿はどこにも見えなかった。脚が震えてうまく動かない。無様に転んだ和希を、RH5703ーY03と名乗った青年は「大丈夫ですか」と助け起こした。 「前のCW9000ー13Tは、型番が古くなったため回収されました」  そんなの知らない。聞いてない。ユキ……っ! ユキ……っ!  涙で視界が滲んで前が見えない。俺に触るな。触れないでくれ。ユキ、ユキ、ユキーー……。  腕を振り払い、その場に崩れ落ちた和希を、RH5703ーY03と名乗る青年は不思議そうな顔をして見ていた。  それから十年。  和希は政府が管轄の研究職に就いた。ビルの外側の環境を整え、再び人間がそこで暮らせるようになるための研究をしている。  それは、ユキと同じ型のCW9000ー13T型アンドロイドが、外の環境地区で働かされているという噂を耳にしたからだ。  先日、あるひとりの天才科学者により、画期的な方法が発明された。人々がまたビルの外で暮らせるまで、あと少しのところまできている。  ユキ。待ってて。必ず迎えに行くから。  和希はそこにあるはずの空をスクリーンから見上げた。いまはまだ偽物の空だけど、いつか必ずユキと空から舞い落ちる雪景色を見る。  和希の目には、その日の景色が見えるようだった。 END

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