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第2話
なんか興奮しすぎて寝られなくて、次の日案の定フラフラになって授業中倒れてしまった。
しかも佐々木先生の授業の時に。みんなのざわつく声、わかるけど……体が動かない。隣の席の髙橋くんはテンパってた。
「熱があるぞ。昨日あれから雨に濡れたからか?」
あれから? にみんなさらにざわつくけど、あれから髪の毛も乾かさずにベッドの上で色々先生のこと悶々と考えてしまった。お風呂に入ったけど……のぼせてしまったし、ベッドに戻っても寝られなかった。
朝起きたら喉が痛かったけどまぁいいかなぁとか思ってたし、学校きて職員室行って佐々木先生のところ行ってありがとうございましたって行ったら
「鼻声だな」
と少し笑ってて、その笑顔も素敵に思えて……。
ああ、これが恋なんだと。顔が真っ赤になったのがわかったけど、それは風邪による熱だったのね。
「すまんがみんな自習しててくれ」
「はいっ!! せ、先生……水城くんを……」
……先生自習にしなくてもいいのに。
まさかと思った瞬間、僕の体は浮いた。少しタバコの香り。ふと顔を上げると、間近に先生の顔。熱上がった、さらに今ので。
先生は僕をお姫様抱っこしてるの? みんな見てるけど恥ずかしい。でも力は入らない。
「水城くん、保健室まで運びますよ」
ハッと目を冷ますと……ベッドの上。保健室だ。頭の下にはアイスノン。
「もう一度熱計りましょう」
佐々木先生は……?
「抱えて運んできたんだからびっくりしたわー」
恥ずかしい。熱は38.0度。それにしても保健室のベッドはいつもの僕の部屋のベッドとは違った感じがする。特別な感じがする。パリッとして毛布も少し年季かかってるけどそれはそれで良い。もう少し横になりたい。
「水城くん。大丈夫かね」
佐々木先生! わたしは布団をかぶった。
「先生、まだ熱が下がらないから親御さんに迎えに来てもらったほうがいいかもしれないわね」
「あ、先ほど連絡したらお母様しか在宅でなかったのですが……車の免許がないそうで」
そうなんだよね、お母さん運転できないからなぁ。
「なのでわたしが送っていきます」
えっ……。
「今昼休みなのでちゃちゃっといきましょう。あ、さっきみたいにお姫様抱っこは……流石にあれなので歩けますか? 」
……そっと手を差し伸べてくれた。先生の大きな手。僕はゆっくりベッドから降りた。外はまだ土砂降りだ。
僕は2日連続で車に乗った。助手席。まだ少しパラパラ雨は降ってる。
先生がいきなり覆いかぶさってきた。えっ、えっ。
そして僕の座ってた席はリクライニングを倒され……!
「着くまで横になってなさい」
なんだ、倒されただけか。そしてそっと膝掛けを掛けてくれた。
「お腹を冷やすといかん、男も同じだ」
そうやってこの席に座った女性……あ、たくさんいるんだよね……に対して気遣っているのかな。この膝掛けもいい匂いがしてふわふわしている。うっすら聞こえる好きな曲。先生は小さな声で歌ってる。上手だなぁ。
「まだ止まないね、雨」
歌ってた先生からいきなり僕への投げかけにびっくりした。
「そうですね……プール開きも延期ですか」
「そうだなー。いくら屋根があっても気温が低いと延期だな。まぁ水城くんはその熱を下げて元気になってからだね」
……あ、そういえばプール開きの日は学年の先生全員出てくるから……。
「佐々木先生、2日連続すいません」
「担任として当たり前のことをしてるだけです。ゆっくり休んでください」
「はい、水城くん。家に着きましたよ」
雨はさっきよりも強くなってた。先生は先に車から出て傘をさして助手席のドアを開けてくれた。また手を差し伸べてくれた。
「昨日、僕が傘をさしてあげてたら熱なんて出さなかったのに。ごめんなさい」
僕は首を横に振った。先生の方が濡れてるよ。でも少し大きな傘。先生、大きいから当たり前か……。
玄関まで僕が濡れないように傘をさしてくれていた。お母さんがタオルを持って先生とわたしに渡してくれた。
「先生ありがとうございます」
「お大事にしてください」
お母さんも先生の背の高さに見上げて少し顔を赤らめている。
「水城くん、ゆっくり休んでくださいね」
先生は再び傘をさして車に乗り込んだ。……大きな背中。長い手足。
「素敵な先生ね」
お母さんも惚れてる。……やはり僕たち親子だな。
「着替えて寝てなさい」
僕の頭の中で「水城くん」と呼ぶ先生の声がこだまする。
雨はまだひどい。でも先生、休みの日に見ました。先生が奥さんと仲睦まじか歩いているの。傘をさして二人で相合傘。もうこの恋は実らない。なのにドキドキする。この感情は、なんなんだろう。
そして僕は思い出した。水泳大会……先生たちも水着姿になって泳ぐんだった。先生の水着姿がみれると思ったら……もっと熱が出そうだ、いや熱は上がりっぱなしだ。
でも早く熱を下げて学校に行かなくては。先生に、佐々木先生にすぐ会いたい。
そしてまた雨が降れば……先生と……。そんなことはその後は無かった。でもあの時確かに僕は先生に恋していた。
ああ僕は男の人にでも恋ができる、恋心を抱くことを知ってしまった。
でも1番はあなたです、佐々木先生。
終
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