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第1話 右京&忍編~忍視点~
俺は、神崎忍。
健全な高校一年生…ではない。
実は、幼なじみで、しかも、一つ年上の男の高嶋右京にずっと恋をしている。
でも、右京のやつは、そんな俺の想いに全然というほど気がつかない。
歯がゆさと悔しさが相まって、心が苦しい。
だけど、そんな俺に、その気持ちを伝えようという決心をさせる事件が起こる。
なっ…何と、俺の同級生である松永理央が、右京に告白するところを偶然にも目撃してしまったのだ。
「…高嶋先輩、俺、先輩のことが好きです……。」
何とも、ストレートな告白。
俺は、息をひそめて、死角になる場所から、右京の様子を伺う。
右京は、びっくりした表情と、何とも照れくさそうな顔をしていた。
うーん。
右京のやつ、何て返事をするんだろうか?
俺は緊張しながら、しばらく、二人の様子を見ていたが……。
「こんなところ、盗み見したら、さすがに悪いよな。」
そう小さな声で呟くと、静かにその場から立ち去ってしまった。
あぁ…、小心者の俺。
しかし、その後、右京と松永は、日に日に親しくなっていった。
これには、さすがの俺も、ショックを隠せなかった。
右京の隣は俺……という概念が捨てきれなかったのだ。
チクショウ……。
右京は、俺のものなのに……。
俺の中で、独占欲がムクムクとわいてきた。
あぁ、俺は、こんなにも、右京が大好きなんだな。
改めて、右京への想いを核心した俺は、意を決して、楽しく話している右京と松永の目の前に行くと、
「…右京、今、ちょっといいか?」
そう言うと、半ば強引に右京の腕を掴み、連れ出した。
「…ちょっ、ちょっと、忍?どうしたの?腕、痛いよ。離して……。」
ずんずんと右京の腕を掴み、歩き出した俺。
そして、校舎の裏庭に右京を連れて来た俺は、そこでようやく、腕を離した。
右京は、ちょっと驚いた顔をしている。
「忍?一体、どうしたの?こんなところに連れて来て……。」
「…右京……。俺は、お前が大好きだ。だから、俺と付き合って欲しい。」
いきなりの俺の告白に、右京はびっくり眼になっている。
「えっ?」
「…だから、俺は、右京が大好きなんだよ……。」
「…忍が僕を好き……?」
「そうだよ。だから……、最近、松永と一緒にいることに嫉妬して、腹が立ってた。」
「…そうなんだ……?」
「うん。そうだよ。」
「……………。」
えっ?
ここで沈黙?
それは、ちょっと狡くないか、右京?
そして、しばらくの沈黙の後、右京は言った。
「…僕も……、僕も、忍のことが好きだよ。大好き。」
そして、満面の笑顔になった右京。
チクショウ、その笑顔は反則すぎる。
俺は、これからも右京の一挙一動に翻弄されていくことになるだろう。
惚れた欲目……とは、このことである。
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