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第2話 壱成&千紘編~壱成視点~
俺の名前は、乾壱成、高校二年生。
そして、俺の隣にいるのは、宗像千紘、同じく、高校二年生。
俺たちは、いわゆる幼なじみの関係で、つい先日、恋人同士になった。
「なぁなぁ、壱成。」
「何だよ、千紘。」
「キスしてもいい?」
「…そんなこと……、ダメに決まってるだろう。」
「そっかぁ。…残念……。」
本当に残念そうな顔を千紘がしたので、俺は、心の中では、ごめんな、と呟いていた。
千紘は、端正な顔立ち、スラリと背は高く、そして、成績優秀にスポーツ万能、その上、人当たりも良く、愛想もいいので、男女関係なくモテている。
その事を俺は知っていた。
だから、最初、千紘から告白された時は、驚いたものだった。
何で、俺なんかを好きになってくれたんだろう?と、ずいぶん考えたものだ。
だけど、俺も千紘を密かに好きだったので、その告白は、とても嬉しく、二つ返事でオッケーした。
しかし、俺の返事は、
「千紘がどうしても付き合いたいって言うなら、付き合ってやってもいいぞ。」
という、何とも可愛くないものだった。
俺は、好きな千紘にも、素直になれない。
どうしても素直になれないのだ。
本当なら、千紘と今すぐにでも、キスしたい気持ちはある。
だけど、それを素直に言えない。
だから、千紘とは、未だにプラトニックな関係だった。
付き合い始めてから、千紘は、手を繋ぎたい、キスしたい、など、恋人らしきことを求めては、言ってくれるが、俺はその度、素直になれずに、つっけんどんに突き放し、断ってきた。
俺自身、気恥ずかしいのもある。
だけど、いつまでも、このまま断り続けていたら、千紘に愛想尽かされてしまうかもしれない。
俺はある日、意を決して、言葉にした。
「…あっ、あのさ……、千紘。」
「ん?何?壱成?どうした?」
「…キッ、キッ、キスするか……?」
精一杯の勇気を出して、俺は言った。
千紘は、驚いた顔で、俺のほうを見ていたが、しばらくして、首を横に振った。
「…壱成……。無理しなくていいんだぞ。」
「…えっ?俺は……。」
「無理してますって、壱成の顔に書いてる。俺は、その言葉を貰えただけで充分だよ。だから、俺たちは、俺たちのペースでゆっくりと進んでいこう。なっ?」
俺は、その言葉にじーんっとしてしまった。
「…うん……。」
そして、俺と千紘は、その日初めて、お互いに手を繋いだ。
それだけで、俺は今、充分に幸せいっぱいだった。
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