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第2話

ピッ、 PASMOの入った財布を改札口に(かざ)し、駅のホームへと急ぐ。 行き方なら、解ってる。 もう何度も頭の中でシミュレーションして、叩き込んでいるから。……後は、この療養所を探せばいい。 直ぐにやってきた電車に飛び乗り、息を切らせ閉まるドアを背にすれば……少しだけ冷静を取り戻し、自身の行動力に驚く。 「……」 あの時と、同じだな…… 吹き出す汗を片腕で拭いながら、空いている座席シートに腰を下ろす。 あれは確か、小三の春。 クラス替えで仲の良かった友達と離れ、何となく誰とも遊ばなくなっていた頃。共働きの母の愛読雑誌を盗み見していた俺は、巻末に文通コーナーがあるのを見つけた。 掲載されていたのは、高校生から二十代の女性ばかり。その中にぽつんとあった、俺と同い年の男。 どういう風の吹き回しだったんだろう。今となってはよく思い出せない。字を書くのが嫌いだった俺は、母に内緒でソイツ宛てに手紙を送った。 それからひと月が経ち、文通の事などすっかり忘れていた頃、彼から返事が届いた。 〖手紙、どうもありがとう〗 薄くて細い、だけど、とても丁寧で綺麗な字だった。濃くて太く、ミミズが這ったような俺の汚い字が、恥ずかしくなる程に。 嬉しかった。単純に嬉しくて、何度も読み返した。 顔も声も、本当の名前も知らない、会った事もない相手と、こうして手紙を介して繋がっているんだと思ったら……胸の奥がじんわりと熱くなり、心が浮き立った。

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