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第3話

それから俺は、彼──ソラと手紙のやり取りを始めた。 一年進級するまでの間に、俺はすっかりクラスに馴染み、新しい友達も沢山出来た。それに浮かれていたんだろう。友達の間で流行ってる事や、学校であった下らない事まで細かく書いて、ソラに送っていた。 そんなある日。学校の飼育小屋から一羽、うさぎが消えた。 昨日が飼育当番だった俺は、焦った。帰りに柵の鍵を掛けた時は、確かにこの目で見たのに。 まだ誰にも気付かれていない、静かな朝。俺は、黙ってその小屋を離れた。 けど、逃げた所で無かった事には出来ず。その事で頭がいっぱいで、他に何も手に付かなかった。 〖そのうさぎは、きっと寂しがり屋さんなんだろうね〗 彼の真っ直ぐで綺麗な字が、深く心に突き刺さる。 俺は罪悪感から、ソラへの手紙には〖学校のうさぎが居なくなった〗としか書いていない。 手紙を出した翌朝。小屋へ行ってみると、消えた筈のうさぎが飼育委員の先輩女子に抱き抱えられていた。何食わぬ顔で。俺の心配など、露ほども知らずに。 「……その、うさぎ」 「ああ、この子?……あ、もしかして、逃げ出したと思って探してくれてたとか?」 「………はい」 分が悪そうに答えれば、先輩は屈託のない笑顔を俺に向ける。 「この子はね、ちょっと臆病な所があって。隠れるのが好きなの。 私が見つけてあげると、いつも嬉しそうな顔をするのよ」 〖寂しがり屋さん〗──俺には無かった発想だった。それに、何の情報もなくただあの一文だけで、ソラは消えたうさぎの気持ちを色々想像し、思いを巡らせていたんだろう。 そう思ったら、今まで貰った手紙には痛い程優しく、俺の気持ちに寄り添った言葉が綴られている事に気付いた。

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