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 ―― 希望(31)

 視界がぐるりと回り、シーリングライトの眩しい光が眼を刺した。  背中に柔らかいクッションを感じて、ソファーに押し倒されたのだと分かる。  不意に顔の上に黒い影が落ちて、眩しい天井の光が遮られた。  それが上から見下ろしている凌の顔の影だと把握するまで、随分と時間がかかったように思えるけど、実際はどれくらいなのか分からない。  周りの景色がスローモーションに動いているように見えて、時間の感覚がまるで無くなっているのを感じていた。 「お前が欲しがっていたもの、くれてやる」  耳元で囁いた声は、まるで暖かい水のように変化して、耳から身体の中へ流れていくような錯覚がした。 「俺の事だけ、考えてろ」  凌の声が体内を流れていく感覚に、ぞくぞくする。  頭の中から理性というものが消えてしまい、跡形も失くなっていく。  凌の瞳の中に僕が映っているのが見えて、それがマーブル模様に渦巻いて吸い込まれて見えなくなった。  まるで凌の中へ同化していくような感覚がする。  ――ああ、そうか……僕は凌のものになったんだ。  柔らかく触れられた唇に、言葉にならないくらいの甘い痺れを感じて、堪らなく欲情が込み上げてきた。 「……凌、りょ……う……」  意味もなく何度も名前を呼びながら、気が付けば僕は凌の唇を貪っていた。  凌の唇を割り、咥内へと侵入して、熱い舌を絡め合わせると、彼は応えるように僕の舌を吸い上げて何度もピストンしてくれる。 「……ん、ふぁ……」  唇を重ねる角度を変えて、何度もお互いの舌を行き来させた。  そうするうちに咥内が蕩けていく。  僕の舌も、歯も、全てが溶けて流れて、凌と一体になっていく。これが錯覚かどうかなんて、もう考えることすら放棄していた。  ただ、激しく官能的な世界に陶酔し、身を委ねてしまう。 「……ん……ぅ……っ」  僕の咥内の全てを吸い上げられるような甘美な感覚に、身体が大きく震え、頭の中で何かが弾けて閃光が走った。  低く喉を鳴らすような笑い声を洩らしながら、凌の舌が咥内から出ていって、首筋から胸へと下りていく。  ベルトが外されて、前を寛がせ、身体を締め付けるものが無くなった。そして熱い手が下着の中へ侵入してくる。 「伊織、キスだけで達ったな? すげえグチョグチョになってるじゃん」  何人もの笑い声が、聞こえてきた。

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