1 / 14
第1話
俺がゲイになった転機は、高校2年のときだった。
パートに出ていた母親が、妻子ある男性と浮気した。それに気づいた父親が離婚届を突きつけて、家を出て行った。身勝手な行為をした母親に巻き込まれた形で、俺も一緒に父親に見捨てられた形になる。母親同様に外人の血を引く俺の顔を、見たくなかったのかもしれない。
それまでの裕福な生活ががらりと変わり、バイトを何件もこなしながら、高校に通う忙しい日々を送るうちに、どんどん成績が落ちていく。それと同時に付き合っていた彼女にも振られ、失意のどん底に陥った。
(――どうしたら楽して、お金を稼ぐことが可能だろうか)
考え込んだそのとき、通学に使ってる満員電車で、何回か痴漢に遭ったことを思い出した。当時ヤケになっていたのもあり、自分の躰を売ることについて、罪悪感はまったくなかった。首から下の上半身裸の写真を撮影し、それを添付したコメントを使って、ゲイ専門のSNSで呼びかける。
『俺の初めてと1週間好きにできる権利を売ります。どうぞよろしく!』
すると俺の躰を求めて、たくさんの男が競うようにお金を出した。値段がどんどん釣り上げられた結果、一番の高値で俺を買ってくれた人は、某IT企業の若い社長さんだった。
社長さんから毎月お小遣いをもらうことと、他の男と関係を持たないことを条件に、1年契約で恋人になることを了承する。しかもエッチしたら、ボーナスを提供してあげるなんていうエサをぶら下げられたら、断る理由なんてなかった。
社長さんと付き合ってる間の丸1年に、いろんなことを教わりながら、たくさんのお金を貯金することができた。付き合いを解消しても、大学受験までは塾代を払い続けてくれたりと、最後の最後まで面倒を見てくれたいい人だった。
大学に入ってからも、細々と援交を続けた。資金は当面大丈夫な額を持っていたが、快楽を得るためだけに、惜しげもなく躰を許してしまった。
しかしそんなことばかりしてお金を稼いでいることや、ゲイだとバレたら身も蓋もなくなることに危惧した俺は、友人のツテで高校生の家庭教師のバイトをはじめることにした。ノウハウは社長さんに通わせてもらった、塾の指導を元にしつつ、それと一緒に自分の躰をエサにして、教え子たちを誘惑する。
そんなやり方で家庭教師を続けて、教え子たちの成績を伸ばしていたところに、高校受験を控えた息子を持つ父親に声をかけられた。
『中学3年の息子なんだが、塾に通わせてもさっぱり成績が上がらなくて困っているんだ。優秀な君を、家庭教師として雇いたい』
ちょうど1件、勉強をそっちのけで性的に迫りまくるという、問題ありまくりの高校生との関係を解消すべく、家庭教師を辞めるところだったので、実にいいタイミングでスカウトされたと、このときは思った。
ともだちにシェアしよう!