14 / 14
第14話
「付き合い始めてすぐ……、キスだなんて」
「付き合いは、小さい頃からあるだろ?」
「とにかく、ダメだ!」
ちぇッ、と唇を尖らせ、要人は再び歩き始めた。
優希も並んで歩いたが、頬の火照りが治まらない。
昨日までと違う要人が、確かに僕の隣にいるんだ。
「じゃあさ、優希。こうやって、大きく息を吐いて」
そう言って、要人は白い息を長く吐いた。
朝の冷たい空気の中、要人の吐く息はミントの香りがした。
「こうか?」
優希も、大きく息を吐いた。
冬の空気に、優希の体温が混じってゆく。
その優希の吐く白い息に、要人は自分の吐く白い息を重ねた。
二つの息が、混じってゆく。
二人の吐く息が、一つに重なる。
「要人!?」
「これならいいだろ?」
優希は意外と奥手らしいや。
キスは、しばらくおあずけ。
その代り、冬は毎日こうやって白い息を交わそう。
ほんの少し、二人の間の温度が上がった心地がした。
ともだちにシェアしよう!