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第1話
プロローグ
自分の初恋が砕け散ったのを痛感した。
物心がついた時から俺の全ては兄のものだ
それは今も変わらない
俺の全ては兄様で出来ている
兄様だけの為に生きてきた
あの人にのみ必要とされれば、俺の全てが満たされるんだ
そんな想いもそろそろ終止符を打とうとしている……
白木 綾人
俺の全てというべき兄を奪った人間。
憎しみと憎悪に駆られて、ありとあらゆる手段を興じて陥れようとしたが、完全無敵の兄に全てを妨害された。
それプラス…
兄のあんな姿を初めて見た……
人前で涙を見せるような人ではない強い人
誰にも媚びず、屈しない俺の兄が初めて膝を追って縋る姿を見た。
何事にも熱くなれなかった兄。いつも冷めた兄は誰にも自分の領域を踏み込ませない人だった。
そんな兄を変えた人間がいると思うと、やるせない気持ちと灼けるような胸を焦がす痛みが襲い、咲也は瞳を閉じた。
そして、一人ベッドの中で蹲り、涙を流して抑え込むことのできない想いを囁いた。
「兄様……、好きです…」
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