2 / 222

第2話

「か、門倉君!好きです。付き合ってください!!」 震える声で顔を赤く染める一般的に美少女の部類へ入るだろう女の子から告白を受けるのは門倉 咲也(かどくら さくや)、15歳。 紅茶色の瞳と同じ色をした髪を持つ、色素の薄い麗しの美少年は銀の薄いフレームの眼鏡をかけている。 それは少し神経質そうであったが、とてもストイックかつ、咲也の美貌を引き立たせるアイテムでもあり、とても知的で品の良い雰囲気を醸し出していた。 そんな誰がどう見ても美少年の咲也は掃除当番にて人気のない中庭の落ち葉を箒で掃いている時、告白を受けた。 色恋にときめく卒業間近の中学三年生。 美少女に告白されて嬉しくない男はいないだろう。 この病的ブラコン男以外は… 「俺に話しかけるな。ブサイクな雌ブタがっ!!」 赤い顔の女子は咲也の口から吐き捨てられた言葉にみるみるうちに顔色を青く染めていった。 「何?まだ俺の視界に入るわけ?迷惑だって分かんねーの?お前みたいなブス、3秒直視しただけで目が腐りそうだ。一生俺の前に立つな」 男女共から眼鏡の奥で絶大な色香を感じると人気のある咲也の紅茶色の瞳が不愉快そうに細められる。その瞳で汚いものでも見るような視線を送ると、咲也は女へ背中を見せた。 女の子はこんな悲惨な失恋、夢にも思わず涙を浮かべて走り去っていく。その足音を聞いて、咲也から小さな溜息が漏れた。 ガッツのねぇ奴。 たかがアレぐらいの言葉で身を引きやがって… 中途半端な気持ちなら伝えてくるな かなりの手厳しい感想を胸に眼鏡のフレームを右手の中指で押し上げると、咲也は再び掃除を始めた。 この男、見目麗しい容姿とは反比例した超絶毒舌男だった。 それに加え…… 「あーーー。兄様に会いたい!会って抱きしめてキスしたいなぁ〜。ついでにパンツ脱いでプレゼントして欲し〜」 雲ひとつ無い晴れ渡る空を見上げながら、頬を赤く染めて最後に耳を疑うようなド変態な台詞をボヤく咲也は実の兄、門倉 優一(かどくら ゆういち)に本気の恋心を抱いていた。 兄への恋心は生まれて物心がついた時には既にあり、片想い歴15年。 愛して止まない兄に日夜、胸を焦がしている。 因みに、この溢れんばかりの想いは告白済みで毎度こっ酷くも振られては玉砕するのだが、鋼の根性と打たれ強さを持つ咲也は凝りる事なく邪でただれた恋慕を兄へと募らせていた。 こんなどこかネジが何本も外れた男は周りから「毒舌ブラコン王子」と囁かれていた。 それを知っても知らなくても、困りもしなければ反省もしない咲也は今日も愛して止まない兄へ想いを馳せ、冬の空を見上げた。 「兄様に会いたいな…」

ともだちにシェアしよう!