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第185話
生徒会の業務で昨日とは違い、今日は全員出動日なのだが、何故かここに招かざる客が一人いて、渉の機嫌がすこぶる悪かった。
「さ〜くや!今日、デートしないか?」
「しません」
昨日の今日でまさか来るとは思っていなかった咲也は突然の訪問者、二宮にうんざりしていた。
「じゃあ、一緒に夕飯食おうぜ?咲也の部屋で!」
「迷惑です」
咲也の隣を片時も離れず、あれこれ誘い文句を言う二宮に渉が口を挟んだ。
「あの!仕事中なんですけど!!」
安易に邪魔だと告げると、二宮は咲也に抱きついて笑った。
「じゃあ、咲也の部屋で待ってるよ!」
「はぁ!?嫌ですよ」
抱きつくなと言わんばかりに二宮を押し返したとき、いつ抜き取ったのか、シャランッと咲也の部屋の鍵を二宮は掲げた。
「ちょっ、返して下さい!」
慌てて取り返そうとする伸びてきた咲也の右手を引っ張ると、二宮は華奢な身体を抱きしめて頭へキスを一つ落とした。
「照れるなって。じゃあ、またあとでな〜」
にひひと笑って咲也を解放すると、二宮は颯爽と部屋を飛び出していった。
「はぁ〜?あの人、マジで何がしたいわけ?」
二宮の意図が理解出来ないと怒る咲也の隣で、渉がわなわなと震える。
それを横目に綾人が呟いた。
「咲也君と仲良くしたいんでしょ」
「何のために?」
意味がわからんと、咲也が聞くと綾人があっけらかんと答えた。
「そりゃ、付き合いたいんじゃないの?ゴリゴリの好意丸出しじゃん」
天使の返答に渉はバンッと机を叩く。大きな音にその場にいた全員が驚きに渉を見た。
「お前もなに?二宮先輩もいなくなったんだし、ちゃんと仕事しようぜ?」
「仕事も何も、勝手に咲也の部屋へ入ってるんだろ!?止めなくていいのかよ?」
「いや、止めても無駄だし……」
それなら、さっさと仕事を終わらせたいと効率を重視する咲也に綾人が頷いた。
「うんうん!早く仕事終わらせて二宮先輩とご飯食べよー」
自分も相席すると意気込み、仕事への意欲を綾人が示す。それに倣って、咲也も業務に励んだ。
そんなクールな二人を横目に渉はモヤモヤする己の気持ちに翻弄されながら仕事の手を進めた。
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