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第187話
「おっかえり〜!」
パーンッとクラッカーを鳴らして咲也を迎えたのは満面の笑顔の二宮だった。
クラッカーから放たれた紙吹雪に咲也は部屋が散らかることにイラッと顔を歪める。
「………散らかさないでもらえます?」
兄の友人かつ、先輩なことで迸らしる怒りを抑えて忠告すると、二宮はまぁまぁと、咲也を出迎えてソファへと座らせた。
「テリヤキとダブチ、どっちがいいー?」
「………テリヤキ」
テーブルの上には二宮がデリバリーさせたのか、かの有名なエムックのハンバーガーセットが散乱していた。
「お!被ったね〜!俺もテリヤキ派!ジャンケンな!!」
さいっしょはグーっと勝負をかけてくる二宮に咲也は嫌そうに言った。
「あー、もうダブチでいいーです」
面倒だとダブルチーズバーガーへ手を伸ばしたとき、二宮にそれを制された。
「チッチッチッ!咲也君、妥協はすんなよ。自分の意見があるときは最後まで粘れ!それ、お前の悪い癖な!」
たかがハンバーガーに何を言ってんだと、目を半分閉じて、嫌そうに見ると、二宮はテリヤキバーガーを差し出してくれた。
「今日は譲ってやるよ。だから、今度からはちゃんと勝負するよーに」
「あんたは粘らないんですか?」
「今日は特別だ」
わしゃわしゃと頭を撫でて笑う二宮に咲也はどーもと、ソファの背もたれへもたれたかかった。
「ジュース、コーラだけどいい?」
「はい」
ジャンクフードにはコーラだと言い張り、ストローをセットしてくれる二宮に咲也は徐々に気が抜けて、笑ってしまった。
「お、笑顔発見!!」
ニカッと、嬉しそうに笑う二宮はやたらと咲也にかまってくる。
それが鬱陶しい反面、久しぶりに人との時間をちゃんと持った咲也はむず痒い衝動に陥っていた。
「二宮さんって相変わらず、意味不明に元気ですよね」
「そりゃ、咲也と一緒だしな〜」
「兄様と一緒のときもこんな感じじゃないですか」
「そりゃ、好きな奴の兄貴と一緒だからな〜」
セットのポテトをバクバク食べながら言う二宮に咲也は少し頬を赤く染めた。
「………言ってて恥ずくないですか?」
「へ?全然」
何が?っと、首を傾げて自分を見てくる二宮にドギマギしながら、咲也は先程クラッカーで散らかった地面を見た。
「あ、あの、クラッカーの紙、ちゃんと片付けて下さいよ!」
ハンバーガーで赤い顔を隠すように覆って文句を言うと、二宮はハイハイと返事をしながら我が家のようにテレビのリモコンを手に持った。
「ちょっと!手、拭いてからリモコン触って下さい!!」
「あー……、分かった、分かった。これもあとで拭くから」
小さいことは気にするなと、電源を入れてチャンネルを回す二宮のペースに咲也は落ち着かないと、モヤモヤした。
それを見越したように二宮は咲也へ視線のみ向け、意味深に笑う。
「そうやって、俺のことで頭んなかいっぱいにしてろ」
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