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「お、お前、手がはやくないか!?」
「何言ってんの、遅いくらいだよ」
ほほ笑む隆文は、おそろしいほどの色気と雄を放っていた。
敬は狭い風呂の洗い場で真っ裸にされ、隆文に壁際に追い込まれている。
さっきのキスの後、隆文の手が敬のTシャツの中に忍んできた。性的な匂いに思わず「俺はまだ風呂入ってない!」とその腕を掴むと、「じゃあ入ればいいよね」と隆文が宣い、あっという間にTシャツもジャージもパンツもはぎとられ風呂場に押し込まれてしまったのだ。
ザーザーと熱いシャワーが肩から胸からつま先まで伝い落ちていく。敬と向かい合い、均整の取れた裸体を惜しげもなくさらす隆文は、シャワーの湯を止めて、敬の頭の両脇の壁に肘を付いた。敬は背が高い方だが、さらに高い百八十を超える長身で覆いかぶさられる。敬の磁器のような白い頬がぶわっと赤く染まる。
「親友じゃなくて、もう恋人だよ。でも敬がいやなら今日は……、我慢、するけど」
敬を大切にしてくれている言葉。裏腹に、瞳に揺れる欲情の炎。見たことない色。煽られる。煽られるだけじゃない。ふつふつと、自身の欲が湧いてくる。
敬はそっと隆文の髪を撫で、彫の深い目元を辿り、唇に指を這わせた。隆文の全身が一回りに大きくなったように強張る。
敬の心臓は振り切れそうなほど速くなり熱い吐息が勝手にもれた。
「したい――、俺も、親友とはしないこと、恋人ならすること、隆文と、したい」
隆文が息を呑んだ。
「っ、マジでお前、きれいな顔して強烈な中身、たまんない――っ」
「んっ――」
抱き込まれた敬の唇に熱烈な唇が強く押し当てられる。閉じたままの上下の間(あわい)が隆文の唇に柔くこじ開けるように割られ、そのまま熱い舌がぬるんと口の中に侵入してきた。
「ふぁ……」
上あごをくすぐる舌先に、鼻の奥が甘く溶ける。さまよう舌は優しく絡めとられ、キスの合間に、かわいい大好き誰にも絶対渡さない、お前のこんな顔を知ってるのは俺だけだと囁かれ、くちゅくちゅと舌が絡み合う。敬の肌がぶわっとわななく。
「ぅん……‥っ」
深いキスは初めてだった。好きな人としかこういうことをしたくなかった。好きな人は、きっと、ずっと、隆文だった。
腰が疼き揺らめく。
隆文の骨ばった手は敬の首筋を伝い乳首を摘まんだ。ビクンと敬の肩が跳ねる。
「ん、ん」
反対の手で後頭部を掴まれ深い口づけをされたまま、すでに腹につくほどきつく勃ちあがるものを隆文の手指に扱かれた。
「あ……!」
強烈な快感に、敬は隆文の肩に思わず縋った。抵抗する間もなく、蜜を流しているそれを手とは違う何かがぬるりと付け根から先端へ這う。
「! なに!」
思わず引いた腰は力強い腕で隆文に寄せられてしまい、敬の勃起と、隆文の硬く大きい勃起同士が擦れ合った。
「俺ので擦ってあげる、俺のと敬のをいっしょに扱いてあげる、いっぱい、いっしょに気持ちよくなろ」
「ッ、エロっ、ア……ッ!!」
とろけるように囁かれ、擦られ扱かれ熱いキスをされなすがまま、敬は甘く熱を迸らせた。隆文もまた、息を詰め熱を解き放った。
敬は、恋人になれた嬉しさと気恥ずかしさと気持ちよさとで、うっとりと隆文に抱かれている。
そんな敬の髪を隆文が撫でながら、低く優しく囁いた。
「大学のとき、みんな『見た目がいいから役者志望なんだろ』って言ったけど、敬だけは『演じるの好きなんだな』って言ってくれたんだ。もしかしたらあの時から、俺は――」
終
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