「あぁ、監督から聞いてるよ。俺にスタート教えて欲しいんだってな」 そんなオレに、前嶋さんは笑顔のまま応えてくれた。 「そ、そうなんです、オレ、昔からスタートが苦手で……。前嶋さんのスタート見て、すごくキレイでカッコイイって思って、あんな風にスタートしたくて……」 「そっかぁ、そう思ってもらえるのは嬉しいな。俺も習得するまでかなり苦労したんだ」 照れくさそうに頭を掻きながら話す前嶋さん。 飛び込む瞬間のあの集中した、怖ささえ感じる顔からは想像出来ない顔だった。