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第1話

高二の冬。俺の親友が俺の幼馴染を好きなことを知った。 「なぁ、洋一って高宮さんの幼馴染なんだよな?」 「明美?まぁそうだけど……それがどうした?」 「いや、まぁ、うん……なんでもない」 そう言った拓海の顔は明らかに恋する乙女の顔で鈍チンと言われる俺でもその表情が何を表してるのかは一目瞭然だった。 ーーあぁ、こいつ明美のこと…… 「そういうことか!それなら俺に任せなさい!」 「はぁ?」 大切な親友のため、一肌脱ごうではないか! 「拓海!お前の姉ちゃん、翔南大学だよな」 「そ、そうだけど……」 「オッケイ!」 拓海の返事を聞くや否や俺は明美の教室まで走った。 拓海とは高校の入学式で出会った。出席番号が前後で席も前後だったことから仲良くなるのに時間は掛からなかった。 正直あいつはモテる。背なんか160センチしかない俺に対してあいつは185センチくらいある。おまけに黒髪短髪爽やかイケメンだ。そして成績優秀で性格もいいから友達も多い。天はあいつに二物も三物も与えやがった……くそっ言ってて悔しい。なんか弱点はないのか……ピーマン食べられないとか! でも、不思議なことに一回も彼女を作ったことを見たことがない。よく女子に呼び出されたりしてるんだから告白かなんかだろう。中学でも彼女はいなかったって言ったからきっとこれがあいつにとって初恋だ。相手が明美ってことがちょっと癪だけどそれでも、大事な親友のために俺は出来るだけのことはやってやりたい。 「おい、明美!」 明美のクラスまで行き扉を開けると同時に叫んだ。 「うげっ、洋一じゃん……何?」 「うげっとはなんだよ!まぁいい!お前ちょっと来い」 渋々椅子から立ち上がり俺に近づていくる明美の表情は明らかにめんどくさそうだ。 高宮明美。たまたま家が隣で、たまたま親同士が仲良くて、たまたま幼稚園から高校まで同じ学校だっていう幼馴染。小さい頃は一緒に公園に行ったり家族ぐるみで出掛けたりしていたが中学に行く頃になればお互い男女を意識するのかそれも少なくなっていった。本当それだけの関係のやつ。 ーー明美も、どうやらモテるらしい。まぁ顔は綺麗系だからな。性格はキッツいから俺は好きじゃないけど。あいつに彼氏が出来る前に俺が何とかしないとな 。 「で、なんなの?あんな大声で名前叫ばれるの恥ずいんだけど」 「お前さ、翔南大学志望校にしてるんだよな?」 「そうだけど……それがなに?」 「そっかそっか、それは良かった。はいコレ!」 ニヤニヤする顔を隠せないまま明美に小さく折ったメモを渡した。 「これ……アドレス?誰のよ」 「拓海、寺島拓海。俺の友達知ってるだろ?拓海の姉ちゃんが翔南大学行ってんだよ。ほら、大学の情報とか聞きたいだろ、お前連絡しろよ」 「そうなの……ふーん。わかった」 明美はメモを受け取るとじゃあ戻るわ、と言ってクラスに戻っていった。

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