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第12話
クラブダイアのVIPルーム。
当たり前の様に奥の席を陣取り寛いでいるのは4人の男達。
「何それっ。めちゃめちゃ可愛いじゃんっ。ってか超いい子~っ」
本日のレッスンでの未来とのやり取りを、1から10まで事細かに大和に聞き出した後、海斗は興奮気味にそう言った。
「そうなんだって~。も~まじ超可愛くてさぁ~。顔が本当に可愛い奴って、性格も可愛いんだって改めて思いましたよ」
いつもなら海斗を窘める役の大和だったが、今日は海斗と同様に彼のテンションも高めだ。
そんな2人のやり取りを酒のつまみ程度に聞いていた旬と叶多も、大和の意見に同意する。
「あ~、それはそうかもな~。僻みがないっていうか、ちやほやされてきてるからこそ歪んでないっていうか」
「中途半端に可愛い奴は性格可愛くない奴多いけどな」
美人は優しいとも性格は顔に出るともよく言われる話。
自分達の関わってきた人間を思い浮かべながら、旬と叶多はそう話した。
「あ~っ、もぉ~、まじで早く会ってみたいっ!そんで俺も可愛がりた~いっ!!」
元より興味津々だった未来の事。
大和から話を聞いた今、海斗の未来に会いたい欲は頂点に達していた。
「おいおい。甘やかすなよ?いっくら経歴があるからったって、うちでは新人なんだからさ」
長年憧れたスターにでも会う様なテンションの海斗に、叶多は一抹の不安を感じそう釘を刺した。
「そんなん解ってるよ~。あ~、でも楽しみだなぁ~。早く合同レッスンの日になんないかなぁ~」
OクラスとSクラスの合同レッスン。
お互いの刺激と親睦を深める為に、月に1度行われている。
その日を恋する少女のように潤んだ瞳で待ち望む海斗に、叶多は自分の釘など全くもって刺さりそうも無いことを察する。
本人が駄目なら相方だ、とすぐに刺さりそうな土台にその場所を叶多は変えた。
「大和、ちゃんと海斗に後で言い聞かせとけよ?」
いつも冷静でとても空気の読める大和なので、わざわざ自分が口出すまではないかと叶多は思ったが、一応保険の為にそう言ったのだが。
「え?何をですか?」
その返事は自分の予想とは違ったもので。
「いや、何をってだから、舐められんなよって事に決まってんだろ?」
皆まで言わせるなよという気持ちから、自然と口調がきつくなる。
「あぁ、大丈夫ですよ、神君。未來は良い子ですから。そんな態度とるような子じゃないですから」
しかしここにきても大和からの返事は叶多が満足いくものではなかった。
のほほんと、気の抜けた様な笑顔で返してくる大和に、叶多は思わず言葉を詰まらせる。
「っ、はぁっ?」
暖簾に腕押し。自分の言わんとする事が伝わらなくて、叶多が肩をわなわな震わせていると、そこにぽんと旬の手が乗せられる。
「駄目だ、神。こいつも馬鹿だった」
空気は読めるが如何せんお人好しで、後輩だろうが誰に対しても優しい大和に、そもそも叶多の気持ちなど伝わるはずが無かった。
もやもやと煮え切らない気持ちは残るが、しかし大和や海斗が未来を甘やかそうが彼に舐められようが、どうでもいいと言えばどうでもいい。
クラスも年齢も違う自分はそんな関わらないだろうから、馬鹿二人の事はこの際放っておこうと叶多は思った。
だけど何の因果か、いや、これが運命というものなのか。
この先がっつり未来と関わってしまう事になるなんて、この時の叶多は思いもよらないでいたのだった。
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