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第41話
クラブダイアのVIPルーム。
大和と海斗、そして旬と叶多が向かい合わせのソファーにそれぞれ腰をかけていた。
大和は手に持つグラスを少し乱暴にテーブルに置くと、不快を顕に声を出した。
「まじ許せねぇっ!深谷斗亜っ。俺の可愛い未來を騙しやがってっ!」
合同レッスン終わりに、綾人から一応耳に入れといた方がいいかなと思って、と言われて聞いた未来と斗亜の話。
とんでもない自体が起こっていると、大和は話を聞きながらわなわなと体が震えるのを感じた。
「いや、でもあながち間違いじゃねぇだろ。確かに女は後が面どくせぇからな」
珍しく眉間に青筋をたてて唸っている大和を、叶多は宥める様にそう言った。
「そうそう。つかガキの癖に中々上手い手使うじゃん?やっぱ最近のガキはませてんなぁ~。綺麗な顔してるし俺結構タイプ。んで?付き合ってるの?二人は」
「なっ、付き合ってるわけないじゃないですかっ!未來は深谷の事なんか好きじゃないし、あいつはノーマルですっ」
何ともちゃらけた軽いノリで言う旬に、大和のボルテージは一層上げられた。
そしていつもなら誰より先に話に入った筈の海斗が、やっとその口を開いた。
「え~?そうかな。だってノーマルだったらいくら上手い事乗せられたからって、男にキスされたら不快だと思うよ?」
「でも別に嫌がってはないんだろ?」
「っ…、それはっ…」
海斗との意見は最もで、嫌がっている訳ではない事も綾人から聞いて知っていた大和だったが、それでも腑に落ちない部分が多すぎて、深谷を悪者に出来る理由を探していた。
「まぁたかがちゅーじゃん?別に犯されたわけじゃねぇんだからさ」
けらけらと笑いながら言う旬の台詞に、大和の瞳が大きく開けられる。
「たかがっ!?ってか犯されたらって、そんなの絶対許さねぇっ!」
ブンブンと大きく頭を振りながら、らしくなく強い口調でそう捲し立てる大和に、海斗の眉間に皺が寄せられる。
「はぁっ?何むきになってんのっ?ってかそもそも何で大和の許可がいるわけ?恋人でもない癖にっ」
「なっ、それはっ、だけど心配だろっ?未來は俺の可愛い後輩なんだからっ」
確かに海斗の言う様に、何をむきになってるのだろうと自分でも大和は思っていた。
誰と何をしようが未来の自由。
未来が嫌がっているのならまだしも、そうでない以上自分が口を出すのはお門違いなのかもしれないが、しかし大和は最早未来の事を自分の弟の様に身近に思っていた。
「俺のっ?はぁっ?ばっかじゃないっ?お前のだけじゃないしっ、俺だって未來の先輩だよっ」
いつも穏やかな大和の常ならぬ剣幕に、海斗も影響され声を荒らげてしまう。
「おいおい、なんだよ海斗。お前まさか妬いてんの?未來に」
ぷりぷりとした海斗の態度に叶多がそう鎌をかけると
「なっ!?はぁっ!?何言って」
「か~わいいっ。そんなに大和が好きですかぁ~」
「っ!!なっ、そんなんじゃないっ」
否定の言葉を大声で発するも、その顔は真っ赤になっていて、なんて分かりやすい奴なんだと旬は思う。
「気持ちは嬉しいけど、馬鹿かお前は。相手を考えろよ、小学生だろ?」
海斗の慌て様にすっかり毒気を抜かれた大和は、いつも通りの穏やかな声色で、いつも通り海斗を宥めるポジションについたが
「っ!っだからっ、ちがうって言ってんでしょっ!ばっかじゃないっ!」
焼きもち?俺が未来に?
何でそうなるんだ。
何を言い出すんだ皆してと、わなわなと肩を震わせながら海斗は思った。
焼きもちなんて絶対妬くわけないだろうと。
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