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第2話

「まいったな」  そんな凱の呟きを、バラの彫りが入った花瓶を磨いている志麻 怜也(しま れんや)は聞きつけた。 「何が参ったの?」 「何でもねぇよ」 「僕で力になれるのなら……」 「お前は無理」  言い終わる前に、無理と断定されてしまった怜也は、少しむきになったようだ。  唇を尖らせ重ねてきた。 「聞いてみなきゃ解からないよ」  怜也を諦めさせるため、凱は難問を打ち明けた。 「担当の原稿、テーマが『夫婦』なんだよ」 「原稿?」  凱に依頼のあった原稿は、社内で配布されるミニコミ誌のものだった。  コラム欄に載せるから、とお願いされたのだが、彼にはテーマが合わなかった。 「夫婦について書け、って言われてもよ。未婚の俺に何を書け、と?」  情人、とか、愛人、とかならスラスラ書けるんだが、とニヤける凱。  そんな彼に、怜也は突拍子もない提案をしてきた。

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