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神様の言うとおり!

 午後十時。日課の散歩をいつものコースから(おおとり)神社の方に変えた。竹林を抜ける暗く細い道。生来、怖がりな広夢(ひろむ)の足が止まりそうになる。戻ろうかと振り返ると、道の向こうが見えないほど暗い。これなら月光が差している行く手に進む方がマシだ。なんとか自分を奮い立たせて残りの道を駆け抜けた。 「遅刻だぞ」  息をきらす広夢を気遣うつもりはないようで、高坂(こうさか)は神社へ向かう階段を指差す。 「あれがお百度石だ」  階段の一段目に高さ一メートルほどの細い石柱が立っている。 「お百度石から拝殿まで上って拝礼する。戻ってきてお百度石を回る。それが一回だ。百回達成するまでだいたい二時間くらいだ。がんばれよ」  そう言うと広夢に背を向けて歩き去ろうとする。 「え、待ってよ。僕一人でするの?」  怪訝な表情で高坂が振り返る。 「俺が付き合う謂れはないだろ。自分のことなんだから自分でやれよ」 「冷たいよお」 「情報を教えただけでも親切だ。神社の手伝い、早朝からなんだ。もう帰って寝るよ」  この神社の宮司の息子は働きものらしい。広夢は諦めてお百度石に向き合った。 「今月中に恋人ができなかったら、俺と付き合え」  そう言って迫り来たのは三年の先輩だった。広夢が通う高校の理事長の孫で、学校の中で彼の思い通りにならないことはないと言われていた。 「僕、男なんですけど」 「その愛らしい瞳、真っ白な肌、栗色の髪、なにより優しい微笑み。一目惚れなんだ。性別なんて関係ない」  広夢は男にモテる。小柄で小動物を思わせる可愛らしさが男心をくすぐるらしい。 「猶予期間はやった。約束したからな」  一方的に言いおいて去っていった先輩の背中を見つめていると、クラスメイトの高坂が「鳳神社でお百度参りすると恋人が出来ると教えてくれた。この際、神頼みでもなんでもいい。女子にモテたことがない広夢は、一も二もなく飛びついたのだった。

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