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第10話

 苔むした大きな岩の上に祀られている石造りの祠は、小さかった。  人一人も入れないほどだ。 「俺、霊感とかないから何にも感じないや」  今夜、澪がここへやって来る。  クチナワサマへの、贄として。  蒼大は、祠に向かって呟いた。 「絶対に、澪は渡さねえからな」  そして、祠に背を向け下山した。  野営の準備をしなければならない。  よし、あの祠の近くにキャンプ張るか。  クチナワサマに挑むような気持ちで、蒼大は歩いていた。

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